| 要旨トップ | ESJ64 企画集会 一覧 | 日本生態学会第64回全国大会 (2017年3月、東京) 講演要旨
ESJ64 Abstract


企画集会 T17  3月18日 9:30-11:30 M会場

MAFES 「森林の炭素循環ミステリー」

大塚俊之(岐阜大・流域圏科学研究センター)・小泉博 (早大・先進理工学研究科)

地球上の炭素のミッシング・シンクとして、森林生態系が大きく寄与していたことについては多くの証拠が出されてきた。20世紀末、特に温帯地域では二次遷移や植林による植生回復の結果として森林面積そのものも大きく拡大し、バイオマスへの蓄積(ΔB)として大きな生態系純生産量(NEP)を持っていた(Pan et al, 2011)。さらに近年では、熱帯地域でも二次林の生産力の回復が驚くほど早いこと、成熟林でも生産力が高く維持されることなど、森林生態系の炭素蓄積へのポテンシャルが再評価されてきている。日本でも渦相関法による長年の研究は、やはり冷温帯林がかなり大きなNEPを持つ事を明確にしてきた。一方で、我々はBiometric法の開発について長年研究を行ってきたが、森林がどこにどのように炭素を貯めるのかについては、まだ大きなミステリーが残されていると考えている。これは、日本の多くの森林では、渦相関法NEPに比べてバイオマスへの蓄積量(ΔB)が圧倒的に小さいという事実である。このNEP - ΔBの残差はプロットスケールでの炭素のミッシング・シンクと呼ぶこともできる。系外への流出が無視できる量ならば、有機物として取り込まれたNEPはバイオマス (ΔB) か土壌 (ネクロマスやリターを含む)に貯まるしかないはずである。この企画集会では、プロットスケールでの炭素ミッシング・シンクのミステリーの解明を目指したい。導入として植物からみた日本の冷温帯林での森林炭素循環ミステリーについてまず紹介し、微生物(微生物生態学)、土(土壌有機化学)、水(溶存有機物)の視点から、数年から数十年といった短期時間スケールでのSOMの動態について、どのようなアプローチで、どんな研究が必要なのか考えてみたい。

[T17-1] 「植物から考えてみた」 イントロダクション: 森林の炭素循環ミステリーとは? 大塚俊之(岐阜大学・流域圏科学研究センター)

[T17-2] 「微生物から考えてみた」 吉竹晋平(岐阜大学・流域圏科学研究センター)

[T17-3] 「土から考えてみた」 飯村康夫(滋賀県立大学・環境科学部)

[T17-4] 「水から考えてみた」 川東正幸(首都大学東京・都市環境科学研究科)


日本生態学会