| 要旨トップ | ESJ66 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
自由集会 W08 3月15日 18:45-20:15 Room B
生物の適応進化は、生態学者や進化生物学者を常に魅了し、今なお適応やその過程がさまざまなアプローチで研究されている。進化生態学のモデルでは、最適な適応状態に向かって生物が進化することが暗黙に仮定されていることが多い。しかし現実には、生物の適応が十分でもなければ完璧でもないと感じるような事例を私たちは目にする。これらの事例の中には、形質間トレードオフを考慮すれば実は最適と考えられる場合や、最適な状態に向かって進化している途上の非平衡系である場合が含まれるだろう。しかし、それだけだろうか?
生物はある分布範囲をもっている。分布の外縁では、さらなる適応進化による分布拡大を妨げる要因が存在していると考えざるを得ない。本集会では、分布拡大の最前線における局所適応の阻害要因の一つとして、「集団間の遺伝子流動」に着目する。遺伝子流動の多寡や、分布外縁においては不適応な遺伝子が分布中心から入り込む「移住荷重」が、生物の局所適応の生じやすさ、個体数、分布域の広さなどに影響する可能性がある。そうした事例として、昆虫や巻貝、植物の研究例を紹介する。また、移住荷重の理論研究の第一人者である東北大学の河田氏を迎え、理論研究の現時点の到達点や野外検証の課題についてコメントして頂く。最後に、「生物の不適応」を受け入れてその性質を調べることの進化生物学的・生態学的な意義を議論したい。
コメンテーター:河田雅圭(東北大・生命)
[W08-1]
遺伝子流動からみる適応進化と生物の分布
Limit of adaptation and range expansion caused by migration
[W08-2]
遺伝子流動がもたらす遺伝的荷重と分布域制限:河川性巻貝の汽水域への進出
Genetic load and habitat restriction due to gene flow: local adaptation of river snails to brackish water
[W08-3]
標高万能植物ミヤマハタザオにおける高地有毛遺伝子の低地集団への流入と自然淘汰
Flow of trichome gene from high to low elevation and its natural selection in Arabidopsis kamchatica with wide elevational distribution