| 要旨トップ | ESJ68 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第68回全国大会 (2021年3月、岡山) 講演要旨
ESJ68 Abstract


シンポジウム S17  3月21日 9:00-12:00 Room D

動物の複雑な社会を維持する知性の源流を探る「認知進化生態学」:実践と展望
Cognitive evolutionary ecology: A new approach for the study of the origin of animal intelligence and its relation to complex society

安房田智司(大阪市立大学), 幸田正典(大阪市立大学)
Satoshi AWATA(Osaka City University), Masanori KOHDA(Osaka City University)

近年、ヒト・類人猿といった高等脊椎動物だけが持つと考えられてきた「賢さ」(複雑な社会性・高い認知能力・脳機能)が水圏動物(魚類・頭足類・甲殻類)でも相次いで発見され、従来の動物全般の「賢さ」の常識を根本的に見直す必要が出てきた。我々は、それらを把握するために、現在まで個々に研究されてきた進化・行動生態学、比較認知科学、脳神経科学を融合した『認知進化生態学』の創成に向け準備をしている。まず、社会性や社会の複雑さを行動・進化生態学という自然淘汰の視点から明らかにする。次に、ヒトを含む霊長類の「賢さ」の進化を説明する仮説として提唱された「社会的知性仮説」に基づき、社会性や社会の複雑さと認知能力の関連性を比較認知科学により明らかにする。最後に、様々なレベルの認知能力と関連対応した脳の発達について脳神経科学により展開する。これら一連の学問分野を融合し、動物全般の「賢さ」の検証、その進化要因と維持機構の解明、そして、ヒトの賢さとその起源についても相対的かつ客観的に見直す。本シンポジウムでは、魚類・頭足類・甲殻類を対象動物とした『認知進化生態学』の概要と実践研究例、そして今後の展望を議論する。最初に『認知進化生態学』の概要を紹介する。そして、魚類・頭足類・甲殻類を対象動物とした『認知進化生態学』の最新の実践研究をそれぞれの専門家が紹介し、最後に新規の本学問領域の今後の展望について議論したい。

[S17-1]
「認知進化生態学」とは? *安房田智司(大阪市立大学)
Introduction: cognitive evolutionary ecology *Satoshi AWATA(Osaka City University)

[S17-2]
魚類における複雑な社会の進化・維持機構と認知能力:カワスズメ科魚類を例に *佐藤駿(総合研究大学院大学)
Evolution of complex society and social recognition in cichlid fish *Shun SATOH(Sokendai)

[S17-3]
イカ・タコの賢さの形とその由来 *佐藤成祥(東海大学)
Social recognition in cephalopods *Noriyosi SATO(Tokai University)

[S17-4]
誰もが知らない甲殻類:実は賢いヤドカリ *石原千晶(北海道大学)
Social recognition in crustaceans *Chiaki ISHIHARA(Hokkaido University)

[S17-5]
水圏動物の他者認知と自己認知:顔による個体識別と鏡像自己認知から *幸田正典(大阪市立大学)
Individual recognition and mirror self-recognition in aquatic animals *Masanori KOHDA(Osaka City University)


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