| 要旨トップ | ESJ69 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


シンポジウム S15  3月18日 13:00-16:00 Room A, 現地開催/ライブ配信あり/見逃し配信対応

遺伝子発現制御の生態学:DNAメチル化・クロマチン修飾・RNAサイレンシング
Gene regulation in ecological context: DNA methylation, chromatin modification, and RNA silencing

工藤洋(京都大学)
Hiroshi KUDOH(Kyoto University)

生態学においても環境応答や適応を遺伝子発現制御の変化として研究することが可能になった。遺伝子発現は多段階の機構によって制御されており、その結果としてのmRNA量をqPCRやRNA-Seqを用いて定量する。エピジェネティックな遺伝子発現制御をつかさどるDNAメチル化とヒストン修飾は、組織や環境によって変化することが知られている一方で、細胞分裂を介してその状態が引き継がれることも知られており、数週間から数カ月以上にわたって、ときに世代を超えて情報が伝達される。遺伝子発現制御のメカニズムが解明されつつある一方で、この可変性と安定性を兼ね備えたエピジェネティック制御の機能や意義については未知の部分が多い。おそらく、自然条件で遭遇するような複雑な環境変動、生物間相互作用、個体群・社会構造においてこそ、その意味が理解されるのではないかと考えられる。遺伝子発現は、転写開始領域にリクルートされたRNAポリメラーゼを含む転写複合体がDNA鎖上を移動しながらRNA鎖を合成し、その後の加工を経て成熟したmRNAが読みだされる転写の活性によって制御される。DNA鎖はヒストンタンパク質に巻き付くことでヌクレオソームを形成しながらクロマチンとして高次に折りたたまれており、狭い核内において必要な遺伝子領域を緩めて転写するといった制御も行われている。核内で繰り広げられている多段階の制御には、DNAメチル化・ヒストン修飾といったエピジェネティック制御が関与する。また、転写後においてもRNAサイレンシングといった機構が遺伝子発現調節に大きな役割を果たしている。本シンポジウムでは、野外生物を対象とした最先端の遺伝子発現制御研究を紹介することで、「遺伝子発現制御の生態学」の現状を明らかにする。様々な制御機構がどのような生態的文脈で働いているかを明らかにすることで、その機能や適応的意義の理解をすすめる。

[S15-1]
生態学における遺伝子発現制御研究の基礎知識 *工藤洋(京都大学)
Baisic knowledge for ecological studies on regulations of gene expression. *Hiroshi KUDOH(Kyoto Univ.)

[S15-2]
ウイルス感染がもたらす自然環境下での宿主植物トランスクリプトームの応答 *本庄三恵(京都大学)
Transcriptome response of a host plant to viral infection in a natural environment *Mie N. HONJO(Kyoto Univ.)

[S15-3]
シロアリのカースト分化に関わるゲノムインプリンティング *松浦健二(京都大学)
Mechanism of genomic imprinting underlying termite caste determination *Kenji MATSUURA(Kyoto Univ.)

[S15-4]
植物季節応答におけるエピジェネティック制御 *西尾治幾(滋賀大学)
Epigenetic control of plant responses to seasonal environments *Haruki NISHIO(Shiga Univ.)

[S15-5]
トゲウオにおける新規環境適応における遺伝子発現の進化 *北野潤(国立遺伝学研究所)
Evolution of gene expression for adaptation to new environments in sticklebacks *Jun KITANO(Nat. Inst. Genetics)


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