| 要旨トップ | ESJ69 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
自由集会 W07 3月17日 18:30-20:00 Room A, 現地開催/ライブ配信あり/見逃し配信対応
生物個体群には、単一世代の個体だけではなく、様々な年齢や生育段階の個体から構成される「構造化個体群」が数多く存在する。構造化個体群では、これまで個体群行列モデルを用いたデモグラフィ―研究によって、個体数変動や生活史戦略が調べられてきた。
本集会の目的は、従来のデモグラフィ―研究に遺伝解析や新たな統計量を組み合わせて「構造化個体群の遺伝・進化動態」を考えることである。デモグラフィ―研究の主要な解析方法である個体群行列モデルは、各生育段階の生存率や繁殖率を基に、生活史に沿った個体の生死を記述できる。一方で、構造化個体群の集団遺伝学的な解析手法の一つに、生育段階ごとに遺伝解析をするというアプローチがある。生育段階ごとに得られた遺伝データを個体群行列モデルと組み合わせれば、遺伝子レベルでの動態の記述・予測が可能になると考えられる。また、その動態を反映しうる新たな統計量を導出して、種間で比較するなど、様々な発展の可能性が存在する。
本集会では、まず北村系子氏(森林総研北支)が、ブナ北進最前線の創始者集団において異なる生育段階の遺伝解析から明らかにした、ファウンダー定着後から次世代の定着・成長における遺伝的多様性獲得プロセスについて発表する。次いで都築洋一(北海道大学)が、生育段階ごとの遺伝解析と個体群行列モデルによるシミュレーションおよび理論的導出により、多年生草本植物の遺伝的多様性の年変動を調べた成果を発表する。そして横溝裕行氏(国立環境研究所)が、個体群行列モデルをベースに導出した「繁殖価の流れ行列」とその種間比較結果を発表する。これらの研究事例を踏まえて、最後に、高田壮則氏(北海道大学)を司会に総合討論を開き、今後の研究発展の方向性を議論する。本集会を通して、集団遺伝、デモグラフィ―、生活史戦略といった分野を結ぶ新たな研究軸を見出したい。
[W07-1]
ブナ北進最前線集団の成立過程における遺伝子流動と遺伝的多様性の変化
Changes in gene flow and genetic diversity during the founder process in northward leading-edge population of Fagus crenata
[W07-2]
多年生草本植物における遺伝的多様性の時間変化:遺伝解析と理論的導出
Temporal dynamics of genetic diversity in stage-structured perennial herbs: Genetic analysis and theoretical derivation
[W07-3]
繁殖価の流れ行列による在来種と外来種の比較
Comparing native and non-native species with reproductive-value flow matrices