| 要旨トップ | ESJ69 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨 ESJ69 Abstract |
自由集会 W12 3月17日 18:30-20:00 Room G, オンライン開催/見逃し配信対応
新興感染症の75%は人獣共通感染症であり、世界中で問題となっている。人獣共通感染症の22%は媒介生物が関与しており、病原体は自然界において野生動物と媒介生物の間で維持されている。媒介生物のほとんどが吸血性をもつ節足動物で、温帯地域ではマダニが主要な媒介生物である。日本ではマダニ媒介感染症として、ライム病、日本紅斑熱、重症熱性血小板減少症候群(SFTS)など様々な感染症が知られている。特に、日本紅斑熱とSFTSは西日本から感染地域の拡大に伴い患者死亡数が増加しており、その対策が求められている。対策を検討する上で、人から人への直接感染が生じないことから、マダニとマダニの宿主である野生動物との種間関係といった生態学的背景を理解する必要がある。感染症の原因となるウイルスの予防ワクチンがない状況下では、野生動物管理対策がマダニ媒介感染症対策のオプションの一つとして貢献すると期待できる。しかし、マダニ媒介感染症については医学や獣医学分野における臨床研究を中心に進展し、病原体を媒介するマダニについての生態学的な知見は未だ限られている。
本集会では、近年成果が出てきたマダニに関する生態学的な研究を紹介し、マダニが利用する野生動物と環境、およびマダニの種間関係について明らかになった知見を報告する。そして、生態学的背景の理解が、どのように感染症リスクの予測や生態系管理に貢献しうるのか、その可能性について議論したい。
コメンテータ:松野 啓太氏(北海道大学)
[W12-1]
マダニが好む動物は?文献調査からみた種ごとの宿主嗜好性
Host preference of different tick species based on literature search.
[W12-2]
いつ、どこに、どんなマダニが多いのか?季節、景観、野生動物との関係
What factors relate to ticks emergence? Potential impacts of season, landscape, and host community
[W12-3]
Ecological trap or booster? マダニを増やす宿主と減らす宿主
Different roles of the two tick hosts: Ecological trap and booster