| 要旨トップ | ESJ70 自由集会 一覧 | | 日本生態学会第70回全国大会 (2023年3月、仙台) 講演要旨 ESJ70 Abstract |
自由集会 W16 3月20日 15:00-16:30 Room B
群集生態学の実証研究には、いわゆる“パターンベース”と“プロセスベース”という異なるアプローチがあるといわれる。前者は、野外のパターンを数多く収集・分析することで、規則性の発見を目指す「鳥の目」的研究、後者は主として種間相互作用から群集の形成プロセスに関する仮説を構築し、検証する「虫の目」的研究を指すことが多い。かつてプロセス研究は群集研究の中心であったが、多くの条件依存性が存在することから、ケーススタディの寄せ集めにすぎないという批判も受け続けた。近年では、ビッグデータの解析や環境問題の将来予測との相性の良いパターン研究が盛んである。
今、それでもプロセス研究を続ける研究者に求められる群集生態学への貢献とは何なのだろうか?メタ群集理論や現代共存理論といった、群雄割拠の最新理論を実験的に検証することも一つの答えであろう。しかし、共存機構をメタ群集パラダイムのどれかに分類する、あるいは安定化効果や均一化効果の強さを測る、それだけで本当に良いのだろうか? 個々の種の戦略がぶつかり合うことで生じる、思いもかけない相互作用を解き明かすこと、それもプロセス研究の魅力である。これが新たな理論の材料の提示につながる可能性もあり、こうしたケーススタディの中にこそ、地球上全てとはいかずとも類似の系をよく説明する「ちょうどいい」一般則が見つかるのかもしれない。そもそもパターンとプロセスには階層性があり、何をパターンと呼び、プロセスと呼ぶのか、どうすればプロセスを明らかにしたと言えるのかにも、明確な答えはない。
そこで本集会では、異なる階層、系、関心で種間相互作用を軸に群集を研究する若手研究者を集めた。企画者らによる趣旨説明の後、それぞれが考えるパターンとプロセスの関係と重要性、そして群集生態学の現在地と目的地について議論する。集会の最後には仲澤剛史さん(国立成功大学)にコメントをいただく。
[W16-1]
2種間の繁殖干渉から考える理論間の統合とそのための補助線
How to integrate theories: perspectives from pairwise reproductive interference case studies
[W16-2]
捕食者と被食者の本当の戦い?:プロセス研究から見えてきたこと,見えないこと
Information warfare between predator snail and prey limpet : What extent of their interactions can be revealed by "process-based" study?
[W16-3]
訪花者の多様性ー機能関係におけるプロセスとはなにか :個体の行動変容の重要性
What is a "process" in the context of diversity-function relationships of flower visitors?
[W16-4]
群集全体にもたらされる人為攪乱 ~農薬が水田生物間の相互作用を変える~
Community-wide anthropogenic disturbances: pesticide applications modify interactions among aquatic community members in rice paddies
[W16-5]
"複雑"微生物群集の動態パターン:パターン研究から感じた限界
Community dynamics patterns of "complex" microbial communities: Limitations of pattern based approach to reveal mechanism of community dynamics