日本生態学会

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会長からのメッセージ -その3-

「Ecological Researchの出版と学会の魅力アップへ向けたお願い」

 2019年よりEcological Research(ER)誌は種生物学会のPlant Species Biology (PSB)誌、個体群生態学会のPopulation Ecology (PE)誌の姉妹誌としてWiley社より出版されます。これについては、すでに 可知前会長から報告していますが、この6月にそのための出版契約をWiley社、種生物学会の大原雅会長、個体群生態学会の松田裕之会長および生態学会長の私の4者により、締結いたしました。これら3誌は、それぞれ特色をもった国際誌ですが、Wiley社を通じて日本生態学会の関連雑誌としてプロモーション活動を行うことで、さらに注目を集めやすくなることが期待出来ます。また、3誌を一括して契約することで、出版社に支払う金額も低く抑えられます。これまでのER出版費用は日本生態学会の予算のかなりの部分を占めていましたが、3誌を合同契約することによりその費用を1/10程度に抑えられます。さらに嬉しいニュースとして、この3誌共同出版へ向けて応募していた科研費研究成果公開促進費(国際情報発信強化)も採択されました(助成期間は本年より向こう5年間)。これにより、各学会の財政も一息つくことが出来ます。Wiley社との契約により節約できた予算は、和文誌(生態学会誌、保全誌)の出版支援や、学生会員会費の見直し、会員の活動を支援する広報活動の強化など、会員への一層のサービス向上に役立てたいと考えています。

 さて、実はここからが会員の皆様に是非お願いしたい重要な事項です。Wiley社との契約は来年から5年間ですが、ER誌を筆頭に、この3誌がさらに魅力的な雑誌になれば、5年後には今よりさらに有利な出版契約を結ぶことが出来る可能性があります。有利な出版契約とは、英文誌出版事業が支出ではなく収入に転じることを意味しています。国際的に評価の高い学会誌を出版し、英文誌収入が学会運営の重要な収入源となっている日本の学会もあります。もしそうなれば、科研費や会費に頼らなくても財政的に安定した雑誌出版が可能になります。そればかりでなく、生態学全般の普及活動や会員による研究成果の広報、大会の充実など、会員への一層のサービスを計ることが出来ます。この3誌の魅力を高めることは、日本における生態学の魅力やステータスを高めることになるのです。

 では、ER, PBS, PE 誌の魅力を高めるにはどうしたら良いか。それは、会員一人ひとりの研究にかかっています。3誌の魅力はセールス力、例えば引用数やインパクトファクターなどで測られます。また、多くの国からの論文の掲載も重要です。よって、会員が、その魅力的な成果をこれら3誌に投稿するとともに、国際共同研究を進めて、他の国際誌に論文を投稿するときにはこれら3誌に掲載されている論文を引用すれば、3誌のセールス力は自ずと上昇します。正のフィードバックがかかれば、3誌の魅力はますます上昇し、会員へのサービスはどんどん充実したものになるはずです。

 私がまだ駆け出しの研究者だったころ、論文を書く際、同じ内容なら欧米の著者による論文のほうを積極的に引用した覚えがあります。そのほうが勉強しているように見えるし、国際レベルの研究論文に感じられたからでしょう。また、日本の生態学の研究と海外先進国の研究の方向性にはいくらかのギャップがあり、引用すべき論文があまり見当たらなかったというのも事実です。しかし、時代は変わりつつあります。研究者であれば、公的な予算で得た研究成果は英語論文として執筆し、国際誌に投稿するのが当然の義務となっている時代です。日本の生態学の研究は確実に広がりを見せていますし、欧米にひけを取らない研究成果が日本からも多く発信されるようになりました。日本人にとって英語論文執筆は大変な作業です。それをうまく進めるには研究計画やデータ解析など、いろいろな研究段階で、同僚や他の研究者との議論が助けになります。日本生態学会大会はその場を提供しています。実際、大会に参加すれば、ポスターや口頭発表、シンポジウムの講演から大きな閃きが得られるはずです。もし、そういった関連研究が3誌に掲載されているなら、自分の研究論文をより良くするためにも、引用しない手はないでしょう。もちろん、関係のない研究や疑問に思う研究を無理して引用する必要はありません。しかし、自分の研究をオリジナリティーに満ちた良いものに仕上げるために、ER、PSB, PB誌に掲載されている論文の引用を考えるのは、決して無駄にならないと思います。こんなことを言うと誰かに叱られそうな気もしますが、すでにいくつも論文を書いている研究者であれば、これら3誌に掲載されている論文の引用を実験として検討していただけないでしょうか。その実験(試み)が、正のフィードバックの呼び水となり、3誌の、そして日本生態学会の魅力向上に繋がるはずです。

 現在、出版担当執行理事と3誌の編集長・編集委員が、来年初頭よりER, PSB, PEを姉妹誌として出版するためのシステム作りやポータルサイト構築など細かな作業を進めています。是非、期待してください。そして、3誌への投稿と掲載論文の評価(引用)をよろしくお願いします。

2018年6月28日 会長  占部城太郎

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