2004 年 8 月 25 日 (水) - 29 日 (日)

第 51 回   日本生態学会大会 (JES51)

釧路市観光国際交流センター



シンポジウム&自由集会
  時間順 | 内容一覧


2006 年 10 月 08 日 16:53 更新
目次にもどる

[要旨集] 口頭発表: 生理生態

8 月 26 日 (木)
  • O1-Z01: ()
  • O1-Z02: 開葉パターンが異なるブナとケヤマハンノキにおける光合成能力の温度応答性 (韓, 千葉)
  • O1-Z03: ()
  • O1-Z04: 光前歴が落葉広葉樹の解剖学的構造と光_-_光合成特性に与える影響 (田中)
  • O1-Z05: 外来植物ハナダイコン(ショカッサイ)の分布・生長・種子生産と光環境の関係 (石川, 中嶋, 今枝)
  • O1-Z06: 異なる光環境に生育するマカランガ属6種の成長特性 (香山, 市栄, 市岡, 小池)
  • O1-Z07: ユリ科草本植物の葉群タイプと光獲得の関係 (齋藤, 鞠子)
  • O1-Z08: 富士山剣丸尾溶岩上のアカマツ林亜高木層での常緑広葉樹優占の生態学的意義 (山村, 柴田, 中野)
  • O1-Z09: 富士山火山荒原の一次遷移過程においてミヤマヤナギ実生の定着に及ぼす外生菌根菌の影響:フィールド接種実験によって解明された養分吸収機能の菌種特性 (奈良)
  • O1-Z10: 高CO 2濃度で生育したイネの光合成速度の温度依存性の季節変化 (アラマス, 彦坂, 広瀬, 長谷川, 岡田, 小林)
  • O1-Z11: Stomatal indices of various vine species in Japan and Malaysia (鄭, 古川)
  • O1-Z12: 単一気孔のCO2濃度変動に対する影響 (鎌倉, 古川)
  • O1-Z20: 山口県におけるニホンジカの臓器重量の季節変化 (伊藤, 細井, 田戸)
  • O1-Z21: アカネズミを生物指標としたダイオキシン汚染の影響評価;ダイオキシン感受性に関与するAryl hydrocarbon Receptor(AhR)の多型解析 (石庭, 十川, 安元, 當間, 松木, 新村, 高橋, 梶原, 関島)
  • O1-Z22: シオジとヤチダモの滞水による成長への影響 (崎尾)
  • O1-Z23: 水生植物ヒルムシロ属における環境ストレス応答 (飯田, 小菅, 角野)
  • O1-Z24: クローン植物サクラソウのクローン成長特性のジェネット間変異 (野田, 村岡, 鷲谷)
  • O1-Z25: 落葉広葉樹林に生育する4樹種の梢端部付近の無機元素分布の季節変化 (竹田, 森下, 籠谷, 野間, 荻野)
  • O1-Z26: 熱帯樹木における樹高と木部構造の形態的特性の関係 (辻)

09:30-09:45

O1-Z01:

(NA)


09:45-10:00

O1-Z02: 開葉パターンが異なるブナとケヤマハンノキにおける光合成能力の温度応答性

*韓 慶民1, 千葉 幸弘1
1森林総合研究所 植物生態研究領域

 植物は生息する環境に適応・馴化している。1生育期間中でも生育する温度によって光合成適温が変化する樹種もある。このように,光合成速度が最大になるように適温が変化するのは、常緑性葉で顕著に認められたが,落葉樹では適温の変化が種によって異なる。落葉樹は葉の展開パターンによって,順次開葉型と一斉開葉型に分けられる。本研究では順次開葉型のケヤマハンノキと一斉開葉型のブナの3年生苗木を用いて,葉内窒素量・生化学モデルを基に求めた光合成パラメータ及びその温度応答性の季節変化を測定し,葉の光合成能力の温度順化に関する開葉パターンの影響を検討した。
 ブナの面積あたりの葉内窒素量は6月には最大値に,8,9月には顕著に減少した。一方,ケヤマハンノキでは,4月に展開した春葉より5月の夏葉の窒素量は減少したが,6月以降に展開した夏葉の窒素量は次第に増加する傾向が見られた。これらの変化は面積あたりの葉乾重と葉乾重あたりの葉内窒素量の季節変化と関係あることが明らかになった。25度で求めた光合成パラメータの最大RuBPカルボキシラーゼ速度と最大電子伝達速度は,ブナでは葉が展開した直後の5,6月には高く,7,8,9月には約2倍低下した。一方,ケヤマハンノキでは,光合成パラメータは1生育期間中に高い値を維持した。また、光合成パラメータの最適温度は2樹種とも8月に高くなる季節変化を示した。これらの結果から,順次開葉型では,葉の展開する時期の温度に応答し,異形葉を創りだすことによって,光合成速度が最大に維持した。一方,一斉開葉型では,開葉期以降の温度条件に適応しきれず光合成速度が低下した。


10:00-10:15

O1-Z03:

(NA)


10:15-10:30

O1-Z04: 光前歴が落葉広葉樹の解剖学的構造と光_-_光合成特性に与える影響

*田中 格1
1山梨県森林総合研究所

 落葉広葉樹7種(コブシ,ケヤキ,ミズナラ,コナラ,クリ,ブナ,ミズメ)の葉の解剖学的構造と光_-_光合成特性に与える光前歴の影響を明らかにする目的で本試験を行った。
 相対PPFDで100%,42.5%,16.6%,7.4%の被陰試験区を設定し,前年から各被陰試験区内で生育していた被陰2年目の苗木および前年には全天空条件の十分な光強度で生育していて,当年に被陰試験区に移植された被陰1年目の苗木について,葉の解剖学的構造として柵状組織の層数と厚さ,光_-_光合成特性として光_-_光合成曲線の曲率と飽和純光合成速度を取り上げて測定・比較した。
 その結果,光環境に応じて柵状組織の層数を変化させて柵状組織の厚さを変える樹種で被陰1年目と2年目の相対PPFDに対する柵状組織の層数の変化パターンが大きく異なったことから,柵状組織の層数には光前歴の影響が認められたが,柵状組織の厚さ,光_-_光合成曲線の曲率および飽和純光合成速度の被陰強度に対する変化パターンは被陰1年目と2年目でほとんど同じであったことから,柵状組織の厚さ,光_-_光合成曲線の曲率および飽和純光合成速度には光前歴の影響がほとんど認められなかった。
 以上のことから,落葉広葉樹においては,生育位置の光環境が変化しても柵状組織の厚さ,光_-_光合成曲線の曲率および飽和純光合成速度については光環境の変化に迅速に応答して当年の光強度に応じた性質を示すように順応し,前年の光前歴の影響を受けにくい可能性が高いことが示唆された。


10:30-10:45

O1-Z05: 外来植物ハナダイコン(ショカッサイ)の分布・生長・種子生産と光環境の関係

*石川 真一1, 中嶋 淳1, 今枝 美香1
1群馬大学社会情報学部

ハナダイコン(別名オオアラセイトウ・ショカッサイ、 Orychophragmus violaceus)は中国原産の外来植物で、日本には江戸時代に導入された記録があるが、本格的導入は戦後のようである(清水ら)。現在関東以西に広く分布している(津村)が、その生態的特性、特に光環境と分布の因果関係については研究例がない。本種は冬季一年生植物で、秋から早春にかけての明るい時間的ニッチを利用しているように考えられる。そこで、前橋市内50地点においてハナダイコンの分布と生育地の相対光強度調査を2年間行い、また人工被陰によって0.6-100%の相対光量子密度条件を設定し、それらの下での生長解析・枯死率測定を行い、さらに室内で種子発芽実験を行った。
野外調査の結果、ハナダイコンは早春の相対光強度がおおむね30-100%の場所に生育しており、特に80-100%の場所に集中して分布していることが明らかになった。またこれらの地点においては、相対光強度がより高い地点で生育した個体ほど、より多くの種子を生産している一方で、発芽率は相対光強度が低い地点で生産された種子の方が高い傾向があった。被陰実験では、相対光強度3%以下で栽培した個体のほとんどが春を待たずに枯死し、枯死率は9-13%区で最も低くなった。
以上のことより、ハナダイコンは明るい光環境により多く分布しているが、ある程度(10%前後)の暗い光環境下においても生存・生育可能であると考えられる。またこの程度の暗い環境下においては、発芽率の高い種子を個体サイズに応じた数だけ生産して、個体群を維持していると考えられる。


10:45-11:00

O1-Z06: 異なる光環境に生育するマカランガ属6種の成長特性

*香山 雅純1, 市栄 智明2, 市岡 孝朗3, 小池 孝良4
1森林総合研究所北海道支所, 2シンガポール植物園, 3名古屋大学大学院生命農学研究科, 4北海道大学北方生物圏フィールド科学センター

マレーシアサラワク州、ランビル国立公園には、多種にわたったMacaranga属(オオバギ属)の樹木が生育している。マカランガ属の樹木は近縁でありながら形態は種ごとに大きく異なり、様々な光環境下に生育している。本研究は、光環境に対する順化能力を光条件が異なる地域に生育するマカランガ6樹種 (明るい地域-M. winkleri: win, M. gigantea: gig, 中程度の明るさ-M. beccariana: bec, M. trachyphylla: tra, 暗い地域-M. kingii: kin, M. praestans: pra) に関して光合成をはじめとする成長反応の測定を行い、光環境に対するった。測定には、PPFDが1,000 µmol m-2s-1以上の明るい地域の個体 (win, gig, bec, tra)、もしくは100以下の暗い地域の個体 (kin, pra) と、遮光を行ってPPFDを300 µmol m-2s-1程度に調整したハウスの中で育成させた個体 (6樹種) を用いて光合成速度を測定した。また、葉の厚さの測定、葉内窒素・クロロフィル濃度の分析、および葉の内部構造の観察を行った。
 その結果、bec、tra、kinは暗い環境の個体では、葉が薄くなり、窒素・クロロフィル濃度が上昇していたことから、暗い環境に対する順化能力が高いと推察される。 becとtraは、明るい環境の個体も高い光合成速度を示すことから様々な光条件下で生育可能であると推察される。また、kinは暗い環境の個体で光合成速度が高いことから、暗い環境の方が生育に適していると推察される。一方、win、gig、praは暗い環境の個体において葉厚・窒素・クロロフィル濃度に差がなかったため、暗い環境に対する順化能力は高くないと推察される。winとgigは明るい環境では光合成速度が高く、明るい地域の方が生育に適していると推察される。一方、praは暗い環境下で光合成速度が高いが、kinと比較してもクロロフィル濃度が低く、暗い環境が生育に適していない傾向を示した。


11:00-11:15

O1-Z07: ユリ科草本植物の葉群タイプと光獲得の関係

*齋藤 雄久1, 鞠子 茂2
1筑波大学 生命環境科学研究科, 2筑波大学 生物科学系

植物はさまざまな光環境に生育しており,それぞれの光環境に適応した葉群の構造と機能を持っている.葉群の構造と機能は相互に関係しあいながら,できるだけ多くの光を効率よく利用し,体の生長材料や維持のためのエネルギー源となる有機物を生産している.光環境と光合成機能の関係については,これまでにも多くの研究がなされてきた.しかし,葉群構造については十分に研究がなされてきたとは言い難い.
ユリ科の草本植物には葉序や分枝形態の異なるさまざまなタイプの葉群構造がみられる.葉群タイプとしては根生タイプ(スズラン,オオバギボウシ),輪生タイプ(ツクバネソウ,クルマバツクバネソウ),互生タイプ(アマドコロ,ナルコユリ),互生・分枝タイプ(ホウチャクソウ,チゴユリ)に分けられる.こうした多様な葉群構造をもつユリ科草本植物は,それぞれが生活する場所での光環境に適応した受光体制を作り上げていると考えられる.
そこで本研究ではさまざまな場所に生育するユリ科草本植物の葉群構造を上述のようにタイプ分けし,受光量との関係を明らかにすることを目的とした.本講演ではまず,葉の角度,サイズと光環境の関係を紹介する.


11:15-11:30

O1-Z08: 富士山剣丸尾溶岩上のアカマツ林亜高木層での常緑広葉樹優占の生態学的意義

*山村 靖夫1, 柴田 麻友子1, 中野 隆志2
1茨城大学理学部, 2山梨県環境科学研究所

富士山北麓の剣丸尾溶岩と呼ばれる溶岩地のアカマツ林では,亜高木層に常緑広葉樹のソヨゴが優占し,ミズナラなどの落葉広葉樹が混生する。この地域は,気候的に冷温帯に属し,周辺の土壌の発達した森林では落葉広葉樹が優占し常緑広葉樹はほとんど出現しない。したがってアカマツ林内での常緑広葉樹の優占は土壌条件に強く関係していると考えられる。そこで,同所的に生育するソヨゴとミズナラの成長様式と栄養塩経済,生理生態的特性を比較し,土壌の栄養条件,水分条件との関係を解析した。
(1)アカマツ林土壌は近隣の冷温帯性落葉広葉樹林の土壌と比べて,無機態・有機態窒素量,土壌含水率が季節を通して低かった。
(2)葉の平均寿命は,ミズナラの約0.5年に対し,ソヨゴでは2.3_から_3.2年であり,葉の寿命の効果により損失が少ない物質経済を有していた。
(3)ソヨゴの葉は窒素の貯蔵器官とし働き,新シュートの形成のための窒素の大きな供給源であった。新シュートへ供給される窒素の63_%_は,前年以前の葉からの転流によるものであった。落葉の際の窒素の回収率は,両種ともに高く,ソヨゴでは56_から_64_%_,ミズナラでは73_%_であった。葉における窒素の貯蔵と再利用の高さにより,ソヨゴのシュートにおける年間の窒素回転率はミズナラにくらべかなり低かった。
(4)ソヨゴの光合成活性はミズナラより低いが,ミズナラでは水ストレスによる光合成の日中低下がソヨゴより強く起こるため,一日の純生産では両種の間に差がなかった。ソヨゴは,ミズナラが葉を持たない時期でも最高気温が5℃以上になる日では光合成生産が可能であるため,年間の光合成生産はミズナラのそれを大きく上回ると推定された。また,光合成生産における水利用効率は,ソヨゴのほうが高かった。       
 以上より,常緑性のもつ物質経済的な利点によって,貧栄養で,乾燥した溶岩地でソヨゴの優占が実現されることが示された。


11:30-11:45

O1-Z09: 富士山火山荒原の一次遷移過程においてミヤマヤナギ実生の定着に及ぼす外生菌根菌の影響:フィールド接種実験によって解明された養分吸収機能の菌種特性

*奈良 一秀1
1東京大・アジア生物資源環境研究センター

ほとんど全ての植物の根には菌類が共生し、菌根が形成されている。通常、フィールドにおいては多様な菌根菌が存在するが、それぞれの菌種がどのような働きを持っているのかについてはほとんど知られていない。本研究では、フィールドにおける接種実験によってミヤマヤナギ実生の定着に及ぼす外生菌根菌の影響と、その菌種特性を調べた。まず、富士山火山荒原に発生した子実体などから、主要な菌根菌11種を分離して、ミヤマヤナギに接種し、それぞれの菌種の1年生菌根苗を作成した。その菌根苗の周りにミヤマヤナギの種子を播種し、菌根苗から伸びる根外菌糸体によって当年生実生に菌根菌を感染させる実験を現地で行った。その結果、根外菌糸体によって感染を試みた全ての実生に当該菌種の菌根が形成され、胞子感染による当該菌種以外の菌根形成は見られなかった。また、各種菌根菌が感染した実生のほとんどは、対照区の実生より多くの窒素やリンを含有し、成長も良かった。こうした実生への菌根菌感染の効果は、菌種によって大きく異なり、窒素吸収量では最大で8.2倍の菌種間差があった。また、実生の窒素吸収量は実生の成長と強い相関があったため、感染実生の乾重にも菌種間差が見られ、その差は最大で4.1倍に達した。このような結果から、富士山火山荒原のミヤマヤナギ成木に共生する外生菌根菌が、根外菌糸体によって隣接する実生に感染し、実生の窒素吸収を増大させることによってその成長を促進させるという機構を解明した。さらに、こうした菌根共生の機能には大きな菌種間差があることを明らかにし、感染する菌根菌の菌種特性が富士山火山荒原のミヤマヤナギ実生の定着を左右する大きな要因となることを示した。


11:45-12:00

O1-Z10: 高CO 2濃度で生育したイネの光合成速度の温度依存性の季節変化

*アラマス1, 彦坂 幸毅1, 広瀬 忠樹1, 長谷川 利拡2, 岡田 益己3, 小林 和彦4
1東北大学大学院生命科学研究科, 2農業環境技術研究所, 3東北農業研究センター, 4東京大学大学院農学生命科学研究科

 化石燃料の大量消費など人間活動により、今世紀末までに大気CO 2濃度は現在の二倍700ppmに達し、年平均気温は2-5°C増加すると予測されている(IPCC 2001)。CO 2は光合成の基質なので、CO 2上昇は直接、植物の物質生産(一次生産となる光合成)機能に大きな影響を与える。高CO 2による光合成速度の応答についてよく研究されてきたが、長期的な高CO 2と他の環境要因(例えば、温度)の組み合わせを調べた研究は相対的に少ない。温度は植物の光合成応答と密接的に関連する。温度ム光合成関係は種によって様々であり、同一種でも生育温度によって変化する。温度ム光合成関係が変化するメカニズムがまだ不明な点が多い。野外の温度環境は季節と共に大きく変動するため、植物の高CO 2応答は季節変化に大きく影響されると考えられる。
 我々は、岩手県雫石で行われているRice FACE(Free Air CO 2 Enrichment、野外の群落に直接、高CO 2濃度のガスを吹き付ける自由大気CO 2上昇実験)においてイネの光合成特性の変化を調べた。
光合成能力はRuBP carboxylation最大速度(V cmax)とRuBP regeneration最大速度(Jmax)で定義される。これらのパラメータはA-Ci曲線から計算することができる。我々はイネの生育期間を通し(6、7、8、9月)、FACEとAmbient CO 2条件におけるイネの葉光合成の温度依存性を調べた。イネの光合成の温度依存性及び高CO 2の影響について議論する。


12:00-12:15

O1-Z11: Stomatal indices of various vine species in Japan and Malaysia

*鄭 愛珍1, 古川 昭雄2
1奈良女子大学大学院人間文化研究科, 2奈良女子大学共生科学研究センター

Vines may exist as liana or herbaceous species with creeping, twining and climbing characteristics. The physiological characteristics of vines and, in particular, stomatal characters have remained equivocal as no much detailed study was conducted. This study was performed to verify stomatal density, epidermal cell density and stomatal index of various vine species, which were sampled in a tropical rainforest in Malaysia and temperate and subtropical areas in Japan. The stomata and epidermal cell frequencies on both adaxial and abaxial leaf surfaces were determined under a microscope which linked to the monitor. The vine species examined in this study were mostly hypostomatous, whereas only a few species were amphistomatous. There was a wide range of the adaxial to abaxial stomatal distribution ratios for the amphistomatous vines. Through the investigation of stomatal distribution on abaxial leaf surfaces, the stomatal density, epidermal cell density and stomatal index were highly varied within the same individual vine species as well as greatly different among the individual vine species. In general, the stomatal distribution on either adaxial or abaxial leaf surfaces were highly different among the various vine species as the reasonable differences in their phenotype and genotype. Correlation analysis was tested to describe the relationship between stomatal density, epidermal cell density and stomatal index at significant level of p<0.05. Strong positive correlations could be determined between stomatal density, epidermal cell density and stomatal index. The correlations between stomatal index and stomatal density were significantly positive in majority of the vines suggesting the increases of stomatal density in vines coincide with increases of stomatal index.


12:15-12:30

O1-Z12: 単一気孔のCO2濃度変動に対する影響

*鎌倉 真依1, 古川 昭雄2
1奈良女子大学大学院人間文化研究科, 2奈良女子大学共生科学研究センター

 同じ葉の中でも、気孔開閉運動が不均一なことはよく知られている。しかし、両面気孔植物の表裏に分布する気孔での環境に対する応答の違いは明らかではない。そこで、両面気孔植物であるグンバイヒルガオ (Ipomoea pes-caprae) 葉の気孔閉鎖速度を種々のCO2濃度条件下において調べた。気孔閉鎖速度の測定は、光強度やCO2濃度を制御して気孔開度を生きたままの状態で直接観察することができる測定系を設定して行った。気孔開度に対するCO2濃度の影響は、ソーダライムでCO2を除去した空気を通気して気孔を開かせた後、CO2濃度を所定の濃度に上昇させることによって測定した。
 気孔は、変動後のCO2濃度が350 µmol mol-1未満では閉鎖は見られなかったが、それ以上のCO2濃度では閉鎖した。CO2濃度変動から気孔閉鎖開始までに要する時間は、CO2濃度の増加とともに短くなった。気孔閉鎖速度は、CO2濃度とともに増加した。気孔閉鎖後の定常状態における気孔開口幅は、CO2濃度の増加とともに小さくなった。すなわち、CO2濃度が上昇すると、気孔開度が小さくなるばかりではなく、閉鎖開始までの時間が短くなった。以上の測定結果から、大気中CO2濃度が孔辺細胞の閉鎖に対する刺激となることが示唆されたが、葉表面と葉裏面に分布する気孔の間では、いずれの値でも差は認められなかった。


13:30-13:45

O1-Z20: 山口県におけるニホンジカの臓器重量の季節変化

*伊藤 直弥1, 細井 栄嗣1, 田戸 裕之2
1山口大学農学部, 2山口県林業指導センター

はじめに
腎周囲脂肪指数(KFI)は栄養状態の指標の一つとして広く用いられている。しかし腎臓重量と体重の間に相関があるという前提が成立しない場合にはKFIの利用は適切でない。実際、エゾシカを含め北方に生息するシカ類のように冬季の環境が厳しい場合、体重の季節変動以上に腎臓自体の重量の変動が大きいため、季節間での脂肪の蓄積度合いの比較にはKFIよりも腎周囲脂肪重量(KFM)そのものを使用した方がよいとの指摘もあった。一方で冬季の環境が穏やかな場所に生息するシカ類ではKFI利用の妥当性が示されている。山口県は年間を通じて気候が穏やかであるため、これまで栄養状態の指標としてKFIを用いてきたが、その妥当性を詳細に検討したことはなかった。今回は山口県のニホンジカについて、臓器重量と体重の比の季節変化を調査したので、KFI利用の妥当性も併せて検討し報告する。
材料および方法
1999年6月_から_2004年4月に山口県豊浦郡豊田町で有害駆除されたニホンジカ約400頭を用い、季節ごとにグループ分けし、体重と腎臓重量(腎臓、心臓、肝臓、反芻胃)の関係を調べた。また腎臓についてはKFM、KFIの季節変化についても解析を行った。
結果と考察
体重との重量比において季節性が認められたのは肝臓と反芻胃であった。腎臓と心臓については季節性が認められなかった。KFIについては、雄は他地域と同様交尾期前の8月に最も高くなりその後減少したが、ピーク時の蓄積量は北方の個体群よりも小さかった。雌は9月に最低となりその後急速に増加して12月にピークを迎えた。雄が夏季に他地域に比べ脂肪を蓄積しないことや、雌が冬季に入っても脂肪を蓄積していることは、冬季の寒さが厳しくないこと、降雪がほとんどないために常緑樹葉に加えドングリなどの種子を餌として利用できることが、山口県のシカ個体群の特性に影響していると考えられた。


13:45-14:00

O1-Z21: アカネズミを生物指標としたダイオキシン汚染の影響評価;ダイオキシン感受性に関与するAryl hydrocarbon Receptor(AhR)の多型解析

*石庭 寛子1, 十川 和博2, 安元 研一2, 當間 士紋3, 松木 英典3, 新村 末雄3, 高橋 敬雄4, 梶原 秀夫4, 関島 恒夫1
1新潟大学大学院自然科学研究科, 2東北大学大学院生命科学研究科, 3新潟大学農学部, 4新潟大学工学部

 ダイオキシン類は、人間の生産活動によって生成される極めて毒性の高い化学物質である。日本におけるダイオキシン類の発生源は産業廃棄物や一般廃棄物の処理工場が主であり、且つ、それらが市街地を避け、山地に建設されることによって森林棲の野生生物への影響が懸念されている。その中でも、日本の森林に広く生息する小型齧歯類アカネズミ(Apodemus speciosus)は、生体内ダイオキシン類蓄積量が食物連鎖を構成する一部の高次捕食者よりも高い値を示し、ダイオキシン類汚染における生物指標としての有効性が注目されている。
 ダイオキシン類が生物に及ぼす影響は、催奇形成、発癌促進、免疫抑制、薬物代謝酵素の誘導など、多岐にわたる。中でも、ダイオキシン類によって誘発される内分泌攪乱作用は、生殖器奇形や精子数の減少といった生物の生殖機能に影響を与えるとされている。個体群レベルで考えると、生殖機能の低下は集団サイズの縮小とそれに伴う近交弱勢を引き起こし、ひいては種の存続に危機的状況をもたらしかねない。一方で、自然下における個体群には多様な遺伝的変異を有する個体が存在し、そのような個体変異がダイオキシン感受性に関与する場合は、ダイオキシン類汚染が選択圧となって個体群に進化的変化をもたらす可能性がある。そのため、ダイオキシン類汚染による影響を評価するには、個体に現れる異常のみに留まらず、汚染により作用を受ける遺伝子レベルにおいて個体群の遺伝的構成変化を捉えていくことが重要である。
 本研究では、アカネズミをダイオキシン類汚染の生物指標と位置づけ、汚染程度の異なる地域において土壌中及び生体内ダイオキシン蓄積量と生殖機能の評価を通して、ダイオキシン類汚染の現状把握を試みる。さらに、ダイオキシンの毒性発現に重要な役割を担う受容体型転写因子AhR(Aryl hydrocarbon Receptor)を、個体群構成の変化を追跡する有効な因子として着目し、そのアミノ酸配列の多型解析を行うとともに、ダイオキシン結合能に関わるPASドメインの立体構造解析から、今回発見されたAhR多型の機能差についても考察する予定である。


14:00-14:15

O1-Z22: シオジとヤチダモの滞水による成長への影響

*崎尾 均1
1埼玉県農林総合研究センター森林研究所

水辺に分布する樹木は、滞水に対して形態的・生理的に適応していることが知られている。モクセイ科トネリコ属に属するシオジとヤチダモは形態的にはよく似ているが、分布は大きく異なっている。シオジは栃木県を北限とし太平洋側の温帯の渓流沿いに分布するのに対し、ヤチダモは北海道から本州中部の積雪地帯の河畔や湿地に分布する。ヤチダモは幹の肥大や不定根の発生によって滞水に適応していることから、2種の分布の違いは、土壌の水環境への適応の違いに起因すると考えられる。そこで、2種の滞水に対する影響を比較するために滞水実験を行った。2種の実生を素焼きの植木鉢に鉢植え、3段階(滞水・適潤・乾燥)の土壌水分下に2年間置き、シュートの成長や個体重量を比較した。1年目は2種とも適潤状態でシュートの成長量が大きく、乾燥状態で小さい傾向があったが、2年目はシオジでは滞水状態で成長量が小さかったのに対し、ヤチダモでは適潤状態とほぼ同じ成長量を示した。2年後の個体重量はシオジでは滞水・乾燥ともに適潤より小さいのに対し、滞水状態に置かれたヤチダモは適潤状態に匹敵する成長量を示した。特に、2種間では根系の成長に大きな差が見られた。ヤチダモでは異なる土壌水分条件でも根の長さや根の生重量に有意差が見られなかった。一方、シオジでは滞水条件下で根系の成長が悪く、適潤条件と比較して根の長さと根の生重量が有意に小さかった。このように、シオジとヤチダモは滞水環境において根の発達が大きく異なっていた。これが個体全体の成長に影響を及ぼし、分布域を規定していることが示唆された。


14:15-14:30

O1-Z23: 水生植物ヒルムシロ属における環境ストレス応答

*飯田 聡子1, 小菅 桂子1, 角野 康郎2
1神戸大学 遺伝子実験センター, 2神戸大学 理学部生物

 水生植物ヒルムシロ属は,世界に100種あまり,日本に19種が報告されている.この群の生活圏は広く,高山の池沼から海沿いの汽水域まで,幅広い水環境に多様化している.これまでの葉緑体DNA上スペーサー領域を用いた日本産ヒルムシロ属の分子系統解析により,本属のヒロハノエビモとササバモは極めて近縁であることが明らかになった.ヒロハノエビモは淡水域と汽水域に生育できるのに対し,ササバモはおもに淡水域での生育に限られている.また2種は生育型可塑性においても大きく異なり,ヒロハノエビモは完全な沈水生活をし,沈水葉を形成するが,ササバモは生育型可塑性を示し沈水葉と浮葉を形成し,渇水時には陸生葉を形成して陸上で生存できる.植物に対するストレスの大きさは,淡水環境と汽水環境,あるいは水中環境と気中環境では異なることから,ヒロハノエビモとササバモは各々の生育環境に対応してストレス耐性を多様化させていることが予想される.すなわち汽水域に生育するヒロハノエビモは塩ストレス耐性を有するが,ササバモは耐性をもたないこと,逆に生育型可塑性を示し夏の高温にさらされるササバモは高温ストレス耐性を有するが,ヒロハノエビモは耐性をもたない可能性がある.そこで,この可能性を検討するため,本研究ではヒロハノエビモとササバモに塩ストレスや高温ストレスを与え,その時のタンパク質発現,成長生理を種間で比較する.また表現型の変化を並行して調べ,ストレス応答と生育型可塑性との関連について検討を行う.


14:30-14:45

O1-Z24: クローン植物サクラソウのクローン成長特性のジェネット間変異

*野田 響1, 村岡 裕由2, 鷲谷 いづみ1
1東京大学大学院農学生命科学研究科, 2岐阜大学流域圏科学研究センター

変動する環境のもとでの適応的形質の遺伝的変異は個体群の存続に不可欠なものとして、その保全の重要性が指摘されている。サクラソウのようなクローン植物おいては、個々のラメット(見かけ上の個体)の生存とクローン成長がジェネット(遺伝的な意味における個体)の適応度を決定する重要な要因のひとつであり、そして、ラメットの生存と成長はその物質生産量に依存する。本研究では、クローン植物サクラソウを材料とし、物質生産特性(個葉の光合成特性)、およびクローン成長特性についてジェネット間変異を検討した。
北海道のカラマツ林伐採跡地のサクラソウ個体群より、異なる生育微環境の4ジェネットよりラメットを採取し、圃場に設けた2段階の光条件の下で2年間生育させ、その光合成特性とクローン成長特性を比較した。その結果、生育実験1年目には光合成特性とその光条件に対する可塑性の大きさに有意なジェネット間変異が認められたが、2年目にはその変異は消失した。以上より、光合成特性は母ラメットの成育環境条件の影響は受けるものの、有意なジェネット間の遺伝的変異は存在しないことが示された。一方、クローン成長特性については、移植2年目に作られた無性芽の数とサイズにおいて有意なジェネット間差が認められた。


14:45-15:00

O1-Z25: 落葉広葉樹林に生育する4樹種の梢端部付近の無機元素分布の季節変化

*竹田 真知子1, 森下 裕美子1, 籠谷 泰行2, 野間 直彦2, 荻野 和彦2
1滋賀県立大学大学院環境科学研究科, 2滋賀県立大学環境科学部

ブナ林内に生育するいくつかの樹種の梢端部における無機元素分布を季節ごとに明らかにし、各元素がいつ、どこに集積され、排出されるのかについて調べた。
 試料採取は滋賀県北東部に位置する金糞岳のブナ林で行った。春、夏、秋にブナ(Fagus crenata)、ミズナラ(Quercus mongolica)、ナナカマド(Sorbus commixta)、リョウブ(Clethra barbinervis)の葉・0-3年枝を採取した。0-3年枝は樹皮と木部に分けた。得られた試料について、Al, B, Ba, C, Ca, Cd, Co, Cu, Fe, K, Mg, Mn, N, Na, Ni, P, Pb, Sr, Znを測定した。
 植物体の骨格は炭素によって構成されている。各部位の元素/炭素比を算出した。葉の元素/C比について見ると、P、Nは春に大きく、夏、秋と値が漸減する傾向が見られた。Ca、Alは春から夏、秋と季節が推移するとともに漸増する傾向が見られた。元素/C比の季節変化は各元素の転流および再転流によって生じると考えられる。再転流しにくいと言われているCaを基準に各元素の葉における再転流率を算出した。その結果、Kはブナ、ミズナラ、ナナカマドでそれぞれ24.2, 88.0, 68.5%が再転流していることが分かった。Al, Naなどの再転流率は負の値を示した。枝における元素/C比をみると、Mg、Kは梢端部で値が高くなった。反対に梢端部で値が小さくなるPbやAlのような元素もみられた。枝における放射方向の元素/C比分布をみると、ほとんどの元素で木部よりも樹皮において高い値を示した。元素/Ca比を比較すると、ブナ、ミズナラ、ナナカマドはPb, Cdが木部より樹皮で高い値を示したが、リョウブではAl, Co, Cu, Mn, Pbなど、より多くの元素にこの現象がみられた。
 葉の展開、枝の伸長がおこる春には、多量元素を形成部位に積極的に集積し、落葉前に再転流によって樹体に回収することが窺われた。毒性元素は形成部位には集積されず、季節の推移とともに葉に移動集積され、落葉とともに体外に排出されることが示された。ブナ、ミズナラ、ナナカマドに比べ、リョウブでは梢端部の枝でも元素が排出されている可能性があることを示唆した。


15:00-15:15

O1-Z26: 熱帯樹木における樹高と木部構造の形態的特性の関係

*辻 祥子1
1生態学研究センター

熱帯ケニア半乾燥地における5樹種について、乾期に上部から枝葉が枯れ下がる現象の原因を明らかにするために、通水性との関係を調べた。
生育調査をした個体の枯れ下がりは、M.volkensii(MV),A.gerrrardii(AG)には全く見られなかったが、S.siamea(SS)は全ての個体で観察された。枯れ下がりを起こし易いSSは、道管面積が4.6×103μm2でアカシアより1.7倍も大きく、直径生長も1.7倍と大きく、通水コンダクタンスは41×10-12m2で、AGの6×10-12m2に比べ著しく高かった。MVは高い通水コンダクタンス(27×10-12m2)を示し生長も速いが、小さい道管から大きい道管まで観察され、枯れ下がりは無かった。これは落葉による乾燥回避と小さな道管径により通水性が維持されるためと考えられる。しかし、空気加圧を用いた道管内への空気侵入(エンボリズム)による通水性の低下はどの樹種でも認められた。
また、幹部より上部の通水コンダクタンスとの比較や根部の通水コンダクタンスの特徴を樹種間で比較した。結果は、通水コンダクタンスは上部の幹部および側枝の先端方向へ向かって高くなり、下方の幹部にいくにつれ通水コンダクタンスは低下した。これにより、若い枝が幹部の通水性が年数を経ている幹部より高く先端部の伸長生長に大きく寄与していると考えられる。
さらに、葉部、葉柄部、葉柄部すぐ近くの部分の木化する前の小枝について水分動態把握のために、通水コンダクタンスの算出を行った。これにより水分消費の制限部位をより細かく測定し、耐乾燥性の特徴について考察した。結果は、葉柄部での水分通道性に対する抵抗が最も大きく、これより葉柄部が葉を通しての樹木内から大気への水移動を制限する部位となって、乾燥地のような水が少ない環境下における樹木内の水分保持能力に寄与していると考察された。