シンポジウム・自由集会の案内
- 企画シンポジウム
- L1: 日本生態学会のめざすところ | L2: 生態学への北からの視点 | L3: 北海道からカムチャッカへ | L4: 湿原の自然再生
- 公募シンポジウム
- S1: ブナ・ミズナラ | S2: 大規模長期生態学 | S3: シカ管理 | S4: アポイ岳高山植物 | S5: 流域生態系保全 | S6: 空間スケール | S7: サクラソウ遺伝学 | S8: 湿地湿原再生 | S9: 東アジア保全管理 | S10: 北川生態学術研究 | S11: 要望書のききめ | S12: 自然再生
- 自由集会
- G1: 生物地理学的歴史 | G2: 小笠原自然再生 | G3: エコツーリズム | G4: 空間構造と食物網 | G5: 知床を探る | G6: 生物多様性科学 | G7: 炭素フラックス | G8: 二酸化炭素吸収 | G9: 保全生態学研究会 | G10: 数理的手法・保全 | G11: マネーのとらまる | G12: タンチョウ保全 | G13: 植物の生理生態 | G14: 外来種新法 | G15: 生態系エンジニア | G16: データ解析・統計 | G17: 街に出よ | G18: 植生地理学 | G19: 陸水低湿地保全 | G20: 自然再生GIS | G21: ニホンジカ管理 | G22: アグロエコロジー | G23: フェノロジー研究会
S1: ブナ VS ミズナラ
日本の冷温帯の夏緑広葉樹林を代表する樹種はブナとミズナラである。そして北半球に広げてもブナ 属とナラ属の好敵手関係は、例えば欧州や北米でもその地域の夏緑広葉樹林成立の木(key)となって> いる。共通して言えることにブナ属は温和な海洋性気候下の保守的な極相種、ナラ属は大陸性気候下 の革新的な極相種というくくり方ができると思う。保守的なブナ属は恵まれた土地的気候的条件下に 成立するが、革新的なナラ属は大陸に広がり、ブナ属のテリトリーにあっては二次林で広がったり、 扇状地や岩角地に土地的に出現したり、活発である。この性格の異なる二者の好敵手関係はどのよう に築かれているのであろうか。北海道にはブナ林の北限があり、ミズナラ林と対当している。その北 限がどのような要因によって決まるのか、多くのアイデアが出された場所でもある。「ブナVSミズナ ラ」に異なる切り口で迫ってみたい。シンポジウムの進め方はミクロからマクロ的視点でと考えた。 一つは遺伝子、個体群、種組成、景観という広がり、一つは日本から、極東、アジア、北半球という 地理的広がりに沿って進めたい。
- 1. 戸丸信弘(名古屋大学大学院生命農学研究科)
- 日本のブナ属における遺伝的多様性と系統地理
- 2. Martin Speier (Hannover University, Inst. Geobotany)
- Dynamics of Holocene migration and mass expansion of Fagus sylvatica (L.) in Central European mountains
- 3. 小林誠(立正大学大学院地球環境科学研究科)・渡邊定元(森林環境研究所)
- ブナ分布北限域におけるブナとミズナラ
- 4. 角張嘉孝・高野正光・横山憲(静岡大・農),向井譲(岐阜大・生),アルトロサンチェス(カナダ ・アルバータ大)
- 苗場山ブナ林における分光反射特性を利用したアップスケーリング
- 5. 星野義延(東京農工大学農学部地域生態システム)
- ミズナラ林の植生地理
- 6. Pavel V. Krestov 1, Jong-Suk Song 2 & Valentina P. Verkholat 1 (1 Inst. of Biology & Soil Science, Vladivostok/Russia; 2 Andong National University, College of Natural Sciences /Korea)
- A phytosociological survey of the deciduous temperate forests of mainland Asia
- 7. 藤原一絵(横浜国立大学大学院環境情報研究院)
- 東アジアのナラ林vsブナ林--とくに中国と日本の相違性と相似性,どのような環境要因 が決め 手になるのか?
- 8. Richard Pott (Hannover University, Inst. Geobotany)
- Development of European beech forests in the Holocene
S2: 大規模長期生態学研究とは何か?
2003年の生態学会において、大規模長期生態学委員会が設けられました。この委員会 は、米国や中国などで行われているような大規模で長期にわたる生態学的研究を日本 においても推進するために議論を深めることを目的としています。これまで、Eメール により委員間で議論してきましたが、1)そもそも「大規模長期生態学」とはどんな ものを指すのかについて研究者のイメージが異なる、2)これまでの大型プロジェク トや国際的共同研究プログラムなどと若い研究者にとって自ら参加したい研究プロジ ェクトとの間にギャップがある、などの問題点があることがわかりました。
この委員会では、今後数回にわたって大規模長期生態学に関するシンポジウムを企画 していきたいと思っていますが、今回は初回でもあるので、そもそも「大規模長期生 態学とはなにか?」という問題について、大規模あるいは長期の研究を経験した若手研究者の経験を話してもらい、若い研究者にとっておもしろい大規模長期研究とはどんなものなのか?を議論します。同時に,こうした大規模長期研究の企画が、いかに大型プロジェクトとして国際的共同研究プログラム等と連携して展開できるか、という方向についても今までの経験に基づいて議論し,今後の委員会の議論の方向を定めたいと思っています。
- 中静 透
- 大規模長期生態学委員会は何をするのか
- 川村健介
- 草原生態系の保全と持続的利用 −衛星モニタリングとGPS/GISの応用−
- 小泉逸郎
- 河川性サケ科魚類のメタ個体群動態:長期データ解析とモデリング
- 福島路生
- ダムによる流域分断と淡水魚の多様性低下 −北海道における過去40年のデータから言えること−
- 正木隆・柴田銃江
- 数ヘクタールのプロットで挑む樹木群集の解明〜繁殖から動態まで〜
- コメント・ディスカッション
- 国際的共同研究プログラムなどから考える大規模長期研究
- 大型研究プロジェクトと若手研究者
S3: Ecosystem managementとしてのシカ管理
知床国立公園は、1964年に国立公園に指定されて以来、原生自然環境保全地域、生態系保護地域、国設鳥獣保護区が相次いで指定されており、我が国でも最も保護の網のかかった国立公園である。さらに、2003年にはユネスコの世界遺産への登録申請が行なわれている。近年、知床ではエゾシカの高密度化にともなう自然植生への被害が健在化したことから、エゾシカの管理計画の作成が求められている。本シンポジウムでは、知床におけるエゾシカ個体群と自然植生の長期モニタリング結果をもとに、「Ecosystem managementとしてのシカ管理」のあり方について議論する。
- 常田邦彦(自然環境研究センター)
- 1.はじめに:国立公園におけるニホンジカ問題
- 宮木雅美(北海道環境科学研究センター)
- 2.シカが森林動態に与える長期的影響 洞爺湖中島の事例
- 岡田秀明(知床財団)
- 3.知床半島のシカ分布と個体群動態
- 小平真佐夫(知床財団)
- 4-1.知床岬の森林植生の変化
- 石川幸男(専修大学北海道短期大学)・佐藤謙(北海学園大学)
- 4-2.知床岬の海岸草原植生の変化
- 梶光一(北海道環境科学研究センター)
- 5.エゾシカの爆発的増加:natural regulation かcontrolか
- 松田裕之(横浜国立大学)
- コメント:植物のリスク管理とシカ個体群管理の統合(案)
- 鳥居敏男(環境省東北海道地区自然保護事務所)
- コメント:知床国立公園とシカ管理
S4: 北海道アポイ岳の高山植物群落
アポイ岳は、北海道日高山脈の南東部に位置し、標高は約800mであるが、その稜線上には高山植物群落が見られる。この山の母岩はカンラン岩であり、稜線付近はそれらの風化により土壌が生成されている。このカンラン岩由来の土壌・海岸気象条件が、低い標高においても高山植物が残存している理由といわれている。 近年、この特殊な高山植物群落が急速に減少しつつある。このような現状において、40年間の植生の記録を基にその変遷、現在の群落の状態、わずかに残ったヒダカソウの個体群の現状について報告を行う。
- はじめに
- 渡辺定元(立正大学環境科学部)
- 1. アポイ岳における高山植物群落の40年間の変遷
- 渡辺定元(立正大学環境科学部)
- 2. アポイ岳・幌満岳の超塩基性岩植生
- 佐藤謙(北海学園大学工学部)
- 3. カンラン岩土壌における植物群落の遷移
- 増沢武弘(静岡大学理学部)
- 光田準(静岡大学理学部)
- 名取俊樹(国立環境研究所)
- 4. ヒダカソウ(Callianthemum miyabeanum)個体群の動態
- 西川洋子(北海道環境科学研究センター)
- 宮木雅美(北海道環境科学研究センター)
- 大原雅(北海道大学大学院地球環境科学研究科)
- 高田壯則(北海道東海大学国際文化学部)
- 5. アポイ岳の植生保護に関する現状
- 田中正人(様似町アポイ岳ビジターセンター)
S5: 流域生態系の保全・修復戦略 ― 生態学的ツールとその適用
1997年の河川法改正によって、治水・利水に加え、河川環境の整備と保全が河川管理の目的に組み込まれた。また、2001年に改訂された環境基本計画では、流域を単位とした健全な水循環の確保が重要課題として掲げられている。このような背景から、水・物質循環と生態系のダイナミクスを総合的に把握し、流域圏の環境を保全・修復する方法を探ることが重要な課題となっている。本シンポジウムでは、「階層的な流域診断モデルの構築と実践」、「総合的な流域診断ツールとしての安定同位体指標の構築」、「生物群集やその生息場所からみた流域環境評価法の確立」、「理論研究によるマネージメント支援」といった観点から、「生態学的ツール」の有効性や問題点を探り、流域生態系の総合的な保全と管理にかかわる新たな方法論開発の可能性について検討することを目的としている。
- 座長 原雄一((株)パシフィック・コンサルタンツ)・山村則男(京大生態研)
- 谷内茂雄 (地球研)
- 流域管理モデルにおける新しい視点ー統合化へむけて
- 陀安一郎 (京大生態研)
- 流域生態圏の環境診断ー安定同位体アプローチ
- 竹門康弘 (京大防災研)
- 河川生態系評価の生息場所-群集アプローチ
- 加藤元海 (京大生態研)
- 群集動態論に立脚した湖沼生態系マネージメント理論
- コメンテーター 矢原徹一(九大院理)・三橋弘宗(兵庫県人と自然博)・ 高村典子(国環研)
S6: 生態学と空間スケール:Multiple spatial scale approaches in ecology
「生態学には一般法則はあるのだろうか?」 従来の生態学、特に個体群生態学や群集生態学は、主に小スケールでの定量的比較調査や野外操作実験に基づく解析により、この問題にアプローチしていた。しかし、得られた一般的結論は、個体群や群集の動態に影響を与える主要な要因の重要性があまりにも条件依存的に変化するため、統一的な理論の確立にはほど遠いというものであった。この著しい条件依存性が生ずる原因の1つとして、個体群や群集の変動に関与する複数の要因がそれぞれ異なる空間スケールで作用している点が挙げられる。大空間スケールで作用する要因(例えば、気候や地質学的要因)は、小空間スケールで働く要因(例えば、競争や捕食などの種間相互作用)の作用機構に影響を与える。従来の生態学は、この点の認識が不十分であったか、あるいは認識していたにもかかわらず、その解明のための有効なアプローチを提示できなかった。このような状況の中で、生態学の一般理論を構築するためには、まず実際の個体群・群集の構造と空間スケールとの間の法則を探すべきであろう。
本シンポジウムでは、生態学の最後のフロンティアとも言うべき「空間スケール」の問題について、個体群生態学・群集生態学・景観生態学・保全生態学などのさまざまな研究分野、理論・数理モデル・森林生態系・海洋生態系などさまざまな研究システムにおける最新の取り組みを紹介する。複数の空間スケールを階層的に組み合わせたアプローチ、異なる空間スケールを連続的に取り扱うアプローチ等、空間スケールを統合的・横断的に扱う新しい解析方法の有効性、今後の発展可能性を議論したい。
- 仲岡雅裕(千葉大)
- 趣旨説明
- 野田隆史(北大)
- 階層的空間配置法:局所群集の低予測性と高条件依存性を超えて
- 高田まゆら・宮下直(東大)
- 個体数と制限要因の関係性を変える上位階層空間からの相加的、非相加的効果
- 奥田武弘・野田隆史(北大)・野田隆史・仲岡雅裕・伊藤憲彦(千葉大)・山本智子(鹿児島大)
- 種多様性の緯度勾配:岩礁潮間帯生物群集のマルチスケールでの変異性
- 島谷健一郎(統計数理研究所)
- 環境傾度に沿って変化する樹木の空間パターン
- 巌佐庸・Schlicht, R. (九大)・佐竹暁子(京大)
- 空間生態学の展開:[1] スケールフリーを示すベキ乗則が出現する機構、 [2]土地利用変化の空間マルコフモデル
- 夏原由博(大阪府大)
- 景観スケールでの生態系変化による個体群の絶滅と保全
- 三橋弘宗(兵庫県博)
- 生態系保全のためのランドスケープアプローチ
- 宮下直(東大)司会
- 総合討論
S7: サクラソウの生態学と集団遺伝学 − エコゲノムプロジェクトの展開
野生植物の個体群や種の存続性の分析・予測には、個体群の遺伝的多様性を 明らかにし、各個体群でどのように遺伝子は受け渡されているのか, 環境との相互作用のなかでどのように自然選択がかかっているのか, 近交弱勢や遺伝的浮動はどれだけ遺伝構造に影響しているのかなどを 把握する必要がある。本エコゲノムプロジェクトは、これまでに多くの 研究蓄積がある他殖性の多年生草本サクラソウをモデルとして,生態学と 集団遺伝学の協力によりこれらの問題の解明を試みるものである.
本シンポジウムでは,プロジェクトのこれまでの成果を報告し、これらを 土台としながら個体群の存続性の予測をするにはどのような手法が有効か, 他殖性の多年生草本全般を想定しながら議論したい.
- サクラソウ・エコゲノムプロジェクトのめざすもの
- 鷲谷いづみ(東大院農)
- 分子生態遺伝学を保全研究に活かす
- 津村義彦(森林総研)
- 日本全国のサクラソウ集団の遺伝的多様性
- 本城正憲(筑波大院生命環境)
- サクラソウ野生集団の空間的遺伝構造と遺伝子流動
- 北本尚子(筑波大院生命環境)
- サクラソウ種子の空間的時間的分散
- 安島美穂(東大院農)
- サクラソウの生活史段階を通じて現れる近交弱勢
- 永井美穂子(東大院農)
- サクラソウにおける有効な花粉流動-血縁構造と近交弱勢の帰結
- 石濱史子(東大院農)
- 野生サクラソウの連鎖地図作成と保全への応用
- 上野真義(森林総研)
- 総合討論
- コメンテーター:矢原徹一(九大院理)
S8: 日本のウェットランドの自然再生は可能か−故きを温ねて新しきを知る湿地生態学−
日本全国の湿地・湿原の変化の現況を把握し、明治大正時代から現在までの湿地の変化を概観する。全国で始められている湿地再生事業の具体的な研究事例を紹介し、実際に再生研究に取組んでいる研究者を中心に、自然再生の理念、具体的、技術的な問題点について掘り下げて議論する。最後に、自然が再生したとどのように評価すべきか自然再生事業の評価のあり方について議論を行う。
- 国土地理院地理調査部環境地理課(中島英敏)
- 日本にはどのくらい湿地が在ったのか? -明治・大正時代と現在の湿地面積の比較−
- 滋賀県琵琶湖研究所 (西野麻知子)
- 琵琶湖内湖の自然再生
- 五洋建設(株) 土木部門環境事業部(中瀬浩太)
- 人工干潟の施工事例とその問題点
- 国立環境研究所生物圏環境研究領域(野原精一)
- 沿岸における湿地生態系の自然再生事業の評価
- コメンテーター: 島根大学汽水域研究センター(國井秀伸)
S9: Conservation and management of national parks and other protected areas in Europe and East Asia
Nature conservation systems and protected areas have been established in Europe and East Asia to conserve sound nature and keep the rich biodiversity. In situ landscape and biodiversity conservation are achieved by designating protected areas including national parks. Ecologists have clarified good aspects of protected area designation, however, total preservation could have never been expected in Germany, South Korea and Japan. This outcome of research and review on the protected areas of Europe and East Asia will suggest appropriate management system in these regions where the human impacts are strong. The status quo of landscape and biodiversity conservation in Japanese national parks will be presented. A skillful landscape architecture company will also report the landscape management of national parks in Japan. We hope the information of protected area management will be discussed through knowledge exchanges and enrich our future direction on this issue.
- Introduction
- Nobukazu Nakagoshi (Hiroshima University)
- Nature conservation concepts and management of protected areas and landscape in Europe
- Harald Plachter (Philipps University)
- Nature conservation systems and protected areas in East Asia
- Nobukazu Nakagoshi and Mikio Kamei (Hiroshima University)
- National strategy and environmental policy for reserved area of Korea
- Sun-Kee Hong (Kookmin University, Seoul) and Yeong-Kook Choi (Korea Research Institute for Human Settlements, Anyang)
- Nature conservation systems and management of protected areas in Japan
- Tatsuo Sasaoka (Ministry of Environment, Tokyo, Japan)
- Landscape architecture in national parks for civilian utilisation and ecoturism
- Shintaro Sugio(PREC Institute Inc., Tokyo, Japan)
- General Discussion
Chair person: Nobukazu Nakagoshi (Hiroshima University), Mahito Kamada(Tokushima University, Tokushima, Japan)
S10: 北川で得られた河川生態学術研究の成果
生態学と土木工学の研究者が同じ土俵で研究する河川生態学術研究会で取り上げられた北川は、有数の自然度の高い川であること、河川激甚災害対策特別緊急事業により河川改修されたことの両面がある格好の研究対象です。第1フェーズの成果の一端を発表します。
- 河川生態学術研究会会長 山岸 哲
- あいさつ
- 小野 勇一(いのちのたび博物館)
- 1. イントロダクション
- 福島雅紀(国総研)
- 2. 北川の高水敷再形成プロセスから見た河川管理上の課題
−高水敷掘削を伴う多摩川の修復との違い− - 杉尾 哲(宮崎大・工)
- 3. 北川本村地区における砂州変化と出水との応答
- 矢原 徹一(九大・理)
- 4. 北川河川改修事業地における植生回復
- 楠田 哲也(九大・工)
- 5. 北川におけるカワスナガニの生息環境と保全
- 岩本俊孝(宮崎大・教育文化)
- 6. 河川敷に棲む中型ほ乳類の土地利用様式と、工事による影響の評価
- 小野 勇一(いのちのたび博物館)
- 7. 総括 −第1フェーズを振り返って−
- コメンテイター
- 玉井 信行(金沢大・工・土木建設工学)
- 鷲谷 いづみ(東京大・農学生命科学)
S11: 大規模開発につける薬――生態学会要望書の「ききめ」を検証する
生態学会は、大規模開発に対して、総会の決議等の形で活発に要望書を提出してきている。要望書を社会的な意味をもつものにするためのアフターケア活動は、研究や教育と並んで、生態学会会員にとっての重要な課題のひとつである。ここでは、最近の要望書の例から西表島のリゾート、西中国山地・細見谷の大規模林道工事、瀬戸内海の上関原子力発電所などへの要望書提出後の現地の最新の状況を報告する。それぞれの現場での要望書の社会的影響力(ききめ)をアフターケア委員の報告に基づいて検証したい。この国の自然と社会の未来の姿を視野に入れつつ、いま研究者がはたすべき役割などをめぐって、多様な意見の率直な交換をおこないたい。
- 馬場 繁幸(琉球大・西表リゾート要望書アフターケア委員長)
- いま西表島で何が起こっているのか
- 安渓 遊地(浦内川流域研究会・上関要望書アフターケア委員長)
- 聞く耳をもたない人々になお語りかける
- 金井塚 務(広島フィールド博物館・細見谷要望書アフターケア委員)
- 細見谷渓畔林の価値と公共工事への固執
- 河野昭一(日本生物多様性防衛ネットワーク・細見谷要望書アフターケア委員)
- 「生命の森」の未来を問う
- 高島美登里(長島の自然を守る会・中国四国地区会)
- 奇跡の海・周防灘からの報告
- 野間 直彦(滋賀県立大・上関要望書アフターケア委員)
- 生態学が原発新規立地を止める?
- 安渓 貴子(山口大非常勤・上関、細見谷要望書アフターケア委員)
- コメント1
- 紺野 康夫(帯広畜産大・日高横断道路要望書アフターケア委員)
- コメント2
S12: 自然再生を生態学に活かす
自然再生事業(生態系修復事業)を成功に導くためには生態学の知見が不可欠である。一方、生態系修復事業は、生態学的仮説に基づき、それを検証できるデザインで実施することにより、これまで研究者単独では実行が困難だった大規模なスケールの「実験」の機会ともなる。そのような研究の成果は、基礎科学と実践活動の両方の進展に寄与するものとなるだろう。 本シンポジウムでは、河川、湖沼、草原生態系を対象に、市民や行政との協働によって進められる生態系修復事業に参画しつつ研究を進めている研究者が、事業への関わり方と研究成果について話題を提供する。それを踏まえ、生態学のフィールドとしての生態系修復事業の魅力・可能性、自然再生事業など保全のための実践活動に対する研究者の関わり方について、参加者とともに議論する。
- 西廣淳・西口有紀・安島美穂・鷲谷いづみ(東京大学)
- 霞ヶ浦湖岸植生再生事業を活用した土壌シードバンクの研究
- 高川晋一・西廣淳・鷲谷いづみ(東京大学)
- 個体群再生事業を通じた絶滅危惧種の生態的・遺伝的特性の解明
- 高村典子(国立環境研究所)
- 湖沼生態系の再生に必要な研究―釧路湿原達古武沼再生への取り組みから
- 安部倉完(京都大学)
- 自然条件下での外来種除去実験〜深泥池における外来魚個体群と群集の変化
- 河口洋一(土木研究所)
- 標津川自然再生事業で取り組む基礎・応用研究
- 津田智(岐阜大学)・冨士田裕子(北海道大学)・安島美穂(東京大学)
- 小清水原生花園における火入れによる植生再生と管理
G1: 日本列島の生物地理学的歴史 - 主に第四紀・最終氷期以降について
最近、生態学会では生物地理に関する総合的な集会は少ない。それは、この分野の人気や生態学における重要性の低下が原因というよりも、生物地理に関する各分野の研究の専門化が進んだことが関連しているだろう。特に、最近の分子系統地理学の発展は著しいものがある。しかし、生物地理学は元来、様々な科学分野の知見の統合によって成り立っているので、この分野での発展は細分・専門化だけでなく統合も必要不可欠である。また、本質的に「繰り返し」がおこらない歴史を推定することは方法論、哲学的にハードルが高い問題であるが、この問題はともすれば忘れられがちである。当集会では各分野での最前線の知識を披露し、生物地理学に対する理解を深めることを目標として企画された。
当集会ではまず、化石記録という歴史の直接的情報と系統地理学的方法による生物地理的過程についての研究例を提示する。次に環境変動と生物の分布変遷の関係についての研究例を示す。最後に生物地理的歴史過程を推定する理論、哲学的背景について考える。
- 1. 趣旨説明 (大舘)
- 2. 甲能直樹 (国立科博)
- 第四紀の日本列島の哺乳類相の成立と変遷
- 3. 大舘智氏 (北大低温研)
- 北東アジア産トガリネズミ類の分布変遷史の1仮説ーバイカルトガリネズミを中心として
- 4. 小田切顕一 (九大院比文)
- 東アジアの森林性ミドリシジミ類 (鱗翅目:シジミチョウ科) の分子系統地理
- 5. 伊藤元己 (東大院総合文化)
- 日本における植物の系統地理学
- 6. 高原 光 (京都府大) (佐々木尚子 (京大農) 代理)
- 氷期・間氷期変動と植生変遷 - 日本列島から極東ロシアにかけて
- 7. 三中信宏 (農環研)
- 生物地理学史を推定する理論とその哲学
- 8. 総合討論・質疑 (司会:三中)
G2: 小笠原諸島の自然再生と利用に研究者はどう関われるのか?
小笠原では、兄島から始まった一連の飛行場計画が白紙に戻されたあと、公共事業の方向が一転し、小笠原の自然環境の保全と復元を目指して、様々な事業主体(関連省庁、東京都、NGO)によって保全事業が近年急速に進められている。この変化は、世界自然遺産候補地・自然再生事業の対象地(環境省)やエコツーリズム推進地(東京都・小笠原村)として取り上げられたことで、調査研究を含めた保全活動が新たな公共事業として成り立っていることが大きい。しかし、各事業主体による保全事業の計画や利用ルール作りがほとんど連携・公開されず、現地では様々な問題を生みだしている。このような現状で、小笠原研究者は、自身の研究テーマに沿って個別に関わりを持っているが、今後は分野横断的な検討を念頭に置きながら、研究者間の連携を強めて各事業に関わりを持つ必要性が生じている。この集会において、まず今後の連携を図るための論議と、最新情報の共有および問題点の整理を行いたい。
- 堀越 和夫(小笠原自然文化研究所)
- 「小笠原研究の課題点と研究者連携の必要性」
- 大河内 勇(森林総合研究所)
- 「研究プロジェクトと現実世界との関わりで考える」
- 可知 直毅(都立大学)
- 「小笠原に研究施設をもつ大学の役割を考える」
- 川窪 伸光(岐阜大学)
- 「ひとりの野外研究者として小笠原研究を考える」
G3: 日本におけるエコツーリズムの現状と研究者の役割
エコツーリズムとは,自然・歴史・文化等の地域特性の観光資源化であり,その実施に際してはこれら資源の持続可能な利用と地域経済への貢献を条件とする観光スタイルである。近年エコツーリズムは,日本各地においても急速に導入されているが,その内容については必ずしも上記条件に当てはまらない単なる自然環境の新たな観光資源化にとどまり,むしろ自然環境の破壊を助長することが懸念されるケースも見受けられる。また環境省においても昨年エコツーリズム推進会議が設置されており,エコツーリズムは国家主導で今後一層普及していくものと考えられる。
本自由集会では,海外におけるエコツーリズムの事業例,日本における現状と問題点について報告する。またこれらの例に対して生物学的および人文・社会学的見地から議論し,日本におけるエコツーリズムがこれからどのような方向を目指すべきかについて考える。さらに,生態学の研究者がエコツーリズムに対してどのような貢献ができるか,どこまで関わるべきかなどについて参加者全体で討論したい。
- 安渓 遊地(山口県立大・国際文化)・安渓 貴子(山口大学非常勤)
- 「聖なる森を守る人々――東アフリカ6000キロの旅から」
- 吉田 正人(江戸川大・環境)
- 「エコツーリズムにおける保全ガイドラインの重要性」
- 宮川 浩((財)自然環境研究センター)
- 「国内外のエコツーリズム導入事例」
- 越智 正樹(京都大・院・農学・農業経済)
- 「エコツーリズム理念における「文化」とはなにか −西表島エコツーリズムと共に学ぶ−」
- 奧田 夏樹(名桜大学・総合研究所)
- 「沖縄県におけるエコツーリズム ─フィールドで見たこと感じたこと─」
G4: 河川生態系の空間構造と食物網の関係
近年,景観生態学的手法や安定同位体比の測定を取り入れることによって,空間スケール別に食物網や物質循環過程が検討されるようになってきた.特に河川生態系では,流域-流程-蛇行区間-瀬・淵-微生息場所など異なる空間スケールの階層構造が客観的に把握できるために,先行的な研究成果が比較的早く蓄積されている.そこで,本自由集会では,河川生態系を対象として,空間構造の違いが食物網や物質循環に与える影響に関する研究事例を紹介する.そして,階層的な空間構造に対応した食物網・物質循環の違いについて,統一的に理解するための方法論や研究テーマについて議論をしたい.
- Introduction 「河川生態系における空間構造・スケールと食物網」
- *土居秀幸(東北大・院・生命科学)・Woodward, G. (University College Cork)
- メタンガス由来の炭素によって駆動する河川食物網
- *高津文人(CREST)・岩田智也(山梨大・工)・加藤千佳(北大・院・農学)・岸大弼(北大・院・農学)・村上正志(北大・苫小牧)・中野繁(京大・生態研セ)
- 瀬・淵スケールにおける食物網構造
- 土居秀幸(東北大・院・生命科学)
- 貯水ダム下流域における食物網構造
- *竹門康弘(京大・防災研)・波多野圭亮(京大・工)・高津文人(CREST)
- 都市近郊河川の生物群集代謝:流域炭素フローの人為改変
- 高橋哲矢(山梨大・工)・*岩田智也(山梨大・工)
- 総合討論
- コメンテーター:占部城太郎(東北大・院・生命科学) 野田隆史(北大・水産)
G5: 地の涯・知床を探る
これまで知床半島では植物群落の現況・大型哺乳類の生活史と個体群動態等、多くの調査が行われ、その原生的な生態系の特性がわかりつつある。それらから、最近20数年で急増したシカの採食圧が、この生態系に様々な影響を与えていることが明らかになってきた。一方こうした調査の過程で、個々の調査目的からは外れるものの学術的に興味深く、生態系保全上重要と目される問題や研究課題が数多く指摘されてきた。本自由集会では、これまで同地で行われてきた調査の概要を説明し、現時点での課題を提起する。大会後の現地視察と合わせ、本集会が新しい視点を持つ研究者との活発な議論の場となり、新規研究への呼び水となることを期待する。
- 1.知床半島岬地区と幌別地区での植生変化
- 石川幸男(専修大学北海道短期大学)
- 2.知床半島のエゾシカとヒグマ:過去20年の動き(仮題)
- 未定(知床財団)
- 3.研究ステーションとしての知床の可能性
- 小平真佐夫(知床財団)
- コメンテーター
- 山中正実(知床財団)
- 岡田秀明(知床財団)
- 梶光一(北海道環境科学研究センター)
大会後、新規合同調査の可能性を探る現地視察を環境省の協力で実施します。宿泊は斜里町の自炊施設が1泊1000円で利用可、他に民宿・ホテルもあります。交通費は斜里町ウトロまでと各調査地への実費が必要ですが、なるべく安価になるよう企画側で配慮します。知床岬へは陸路がないため船を確保します。なお、許可の必要な地区への立ち入りも含むため、人数制限を設けます。視察希望者は7月2日(金)まで、専門分野と知床で希望する研究課題の概略を添え、小平(snc3@ohotuku26.or.jp)までメールにて連絡ください。滞在期間等は個別に対応可能です。
G6: 生物多様性科学の統合をめざして
近年、生物多様性の創出・維持機構の解明への機運が高まっている。生物多様性の創出機構には進化や種分化が関連しており、また維持機構には個体群動態や種間相互作用、物質循環などが重要な意味を持つ。こうした多くの側面を持つ生物多様性の理解には、これまで生態学の各分野で蓄積されてきた様々な視点を総合化するという取り組みが不可欠である。しかし多様な側面の裏返しとして、生物多様性の研究は様々な研究分野に分散して存在し、それらの概念と方法論の共有による理解の深化は必ずしも効率的になされていると言いがたいのが実情である。それらの分散した生物多様性に関連した取り組みを、「生物多様性科学」として統合することは可能なのだろうか? また、それが可能だとすればどのような統合の方向性がありえるのか? 本集会では、一次生産に関する理論、植物と物質循環、昆虫と植物の相互作用という材料も手法も異なる3題の生物多様性への取り組みを紹介し、それらを軸にして様々なアプローチの接点を広範に議論したい。
- 山内淳(京大生態学研究センター)
- 「一次生産に対する植食圧の役割:Grazing Optimizationの理論的解析」
- 清野達之(京大生態学研究センター)
- 「熱帯林における樹木の多様性とその維持機構」
- 中村誠宏(北大低温研)
- 「昆虫群集における植物の形質変化を介して生じるプラスの間接効果」
- コメンテーター: 嶋田正和(東大広域システム)
- 「辛口のコメント」
なお、本集会の企画者と講演者の多くは京都大学生態学研究センターに所属しているが、当センターが生物多様性の解明をめざす研究者間の連携において果たしうる役割についても、生態学会員の意見を広くうかがう機会としたい。
G7: MAFES 「炭素フラックスの時空間変動」
過去十数年間、生態系の炭素フラックスを定量化する研究は著しく増加してきた。それを支える研究分野は生態学だけでなく気象学など様々な分野に渡っており、研究対象とする生態系の種類と数も増えている。しかし、これまでの研究は、調査する生態系を研究者の興味や社会的ニーズによって決め、生態系ごとに、炭素フラックスの時間変動および環境勾配に伴う空間変動について量的に評価してきた。研究の多くはフラックスを測定・観測すること自体に目的が置かれている感がある。そうした研究のあり方は、フラックス研究が炭素循環のコンパートメントモデルに数字を入れるだけの研究と揶揄される原因となっている。本来、炭素フラックスの測定が生態系機能を理解するために行うのであれば、自然界に存在する多様な生態系の機能は炭素フラックスの時空間変動を基本軸とした新たなパラダイムの構築により総合的に理解されるはずである。そうした展開を図らないとすれば、フラックス研究は生態学的な興味に乏しい記載生態学の一研究として評価され続けることになろう。今回、講演を予定している3人の研究者はそうした危機意識のもとに研究を行っている方々である。生態系全体の炭素フラックス、土壌と大気の間の炭素フラックス、モデルによる炭素フラックスの評価など、異なる視点から種々の生態系における炭素フラックスの時空間変動について思うところを語って頂くことにした。
- 小泉 博(岐阜大学流域圏科学研究センター)
- 「炭素フラックスからみた生態系の時空間変動」
- 鞠子 茂(筑波大学大学院生命環境科学研究科)
- 「土壌炭素フラックスの時空間変動」
- 横沢正幸(農業環境技術研究所 地球環境部)
- 「炭素フラックスの時空間変動 -- モデル化の現状と問題点」
G8: 北海道の森林による CO2吸収−フラックス観測サイトからの報告−
森林生態系による炭素(CO2)吸収量に関する高精度のデータを蓄積し,吸収量のダイナミックな変動,および変動要因を明らかにすることなどを目的に,1990年代後半以降,世界各地の様々な森林にタワーを中心としたプラットホームが建設され,微気象学を応用した方法(渦相関法)によるCO2吸収量(フラックス)の長期連続観測(モニタリング)が行われるようになった。現在,北海道では苫小牧国有林(苫小牧FRS),北大苫小牧研究林,北大天塩研究林,および森林総研北海道支所(札幌)の4サイトでCO2フラックスのモニタリングが継続され,それぞれのサイトでCO2フラックスや土壌呼吸量,森林構造(葉面積指数など)などを中心としたデータが数年にわたり蓄積されている。本集会では,各サイトの研究者が観測研究の成果を報告し,情報交換を行うとともに今後の研究展開ついて議論したい。
- 平野高司(北海道大学農学研究科)
- カラマツ人工林(苫小牧FRS)におけるCO2交換量の季節変化と年次変化
- 梁乃申(国立環境研究所地球環境研究センター)
- マルチ自動開閉チャンバーシステムを用いたカラマツ林炭素収支の推定
- 小熊宏之(国立環境研究所地球環境研究センター)
- リモートセンシングを活用した自然生態系の多面的評価
- 高木健太郎(北海道大学天塩研究林)
- 森林伐採が針広混交林流域の炭素・水循環に及ぼす影響について
- 中井裕一郎(森林総合研究所北海道支所)
- 成熟したシラカンバの優先する落葉広葉樹林の炭素収支−森林総研フラックスネット札幌森林気象試験地より−
G9: 保全生態学研究会自由集会〜保全生態学における外来種対策と市民との協働〜
外来種対策では、市民と協働することが、早期発見や迅速対応、予防などの観点から、もっとも重要な取り組みである。しかし日本の外来種対策は、法整備がされ始めた段階であり、外来種問題への国民の理解も、外来種対策における市民との協働も一部に限られる。外来種対策の先進国のニュージーランドでは、税金で賄われる駆除への投資効果を示すため、外来種の捕獲数を「結果」、駆除効果で在来種が回復したことを「成果」と表現を区別し、成果を納税者に理解できるように数値で示す、殺処分問題や駆除に不信感を抱く人々に対し、行政が説明会を持ち理解をはかるなど、市民との協働で対策を進める上で必要な努力を行っているという。自由集会では、外来種対策に関する制度の整備状況の現状を確認した上で、日本での市民参加による外来種対策の例を紹介する。次に、ニュージーランドの外来種対策で市民が重要な役割を果たしていることを、それを可能にする社会的背景や仕組みとともに紹介する。集会を、日本での外来種対策における市民との協働の現状や問題点を考え、外国の先進的事例を勉強する場としたい。
- 鷲谷いづみ(東京大学農学生命科学研究科)
- 保全生態学と外来種対策
- 安部倉完(京都大学理学部)
- 深泥池における外来生物の影響と市民参加による駆除対策―外来魚個体群抑制と底生動物群集の変化―
- 松村千鶴(東京大学農学生命科学研究科)
- 市民と研究者によるセイヨウオオマルハナバチの長期モニタリング
- 小島望(東京大学農学生命科学研究科)
- 市民ボランティアによるセイヨウオオマルハナバチの除去活動
- 水野敏明(WWFジャパン)
- 市民参加による外来生物早期発見のための社会システム:ニュージーランドを事例として
G10: 生態学における数理的手法 ― 野外生物集団の保全
希少動植物個体群の保全を効果的に実行するためには、個体群の調査研究は欠かせない。年変動がある中での個体群の増減傾向を知ることや、保護や開発による個体群の絶滅確率への影響を予測するには、数理モデルが大変有効である。また、環境変動や個体数等の不確実性を考慮に入れた最適保全努力量も議論できる。今回の自由集会では、植物、動物と理論の3名の研究者が話題を提供し、野外生物集団の保全における数理的手法の有用性や課題を議論する。
- 可知直毅(都立大・理)・勝川俊雄(東大・海洋研)
- 小笠原の固有種オオハマギキョウの個体群動態:年変動を考慮した推移行列モデルによる解 析
- 夏原由博(阪府大・農)
- メタ個体群存続可能性分析を用いたカスミサンショウウオの保護シナリオ
- 横溝裕行(九大・理)
- 変動環境下における最適保全戦略の数理的研究
- コメンテーター:松田裕之(横国大・環境情報)
G11: マネーのとらまる
この自由集会では、みなさまから生態学を用いてお金を稼ぐアイデアを募集し、コンテストを開催します。生態学の社会的な活動は、社会貢献の高さに注目があたる一方で、他の生物学分野のように、ビジネスとして高い収益をもつ事業が乏しいように思われます。生態学を活かした新たなビジネスチャンスはないのでしょうか? また、生態学のフィールドには、どのくらいアイデアの原石が転がっているのでしょうか? このコンテストを通して、社会と生態学の新たな関係ついて気軽に考えてみませんか?。
コンテストの開催にあたり、自由集会でアイデアを発表してくださる方を募集しております。この集会では、現実的な制約に縛られない自由な発想の枠から、現時点では不可能かもしれないが、今後の研究如何では将来的に実現する可能性があり、収益が上げられそうなアイデアを探していきたいと思います。発表者による10分程度のアイデアの発表と審査員とのディスカッションの後に、そのアイデアについて審査員が評価いたします。なお、今回は、アイデアの評価に重点をおき、実際にこの企画を通して実際に事業を起こすことはいたしません。お気軽にお申し込みください。なお発表の受付、コンテストについての詳しい情報は、下のホームページをご覧ください。
- 審査員の紹介
- 足立直樹 (株式会社CSR経営研究所)
- 奥山亮 (株式会社エンバイオテック・ラボラトリーズ)
- 五箇公一 (独立行政法人 国立環境研究所)
- マネーのとらまるホームページ
- http://www.ies.life.tsukuba.ac.jp/pe/jes51/
G12: これからのタンチョウの保全管理に向けて
元来タンチョウは夏場北海道で繁殖し、冬場本州で越冬した渡り鳥だった。明治時代に絶滅したとみられたが、大正13年釧路湿原北部の湧水域で20羽ほど生残が確認された。その後、給餌など人々の努力により現在では1000羽ほどにまでに回復した。しかし、開発による湿原減少など自然環境の悪化と個体数増加により、繁殖地の環境収容力は飽和状態となっている。その結果、今まで繁殖に不適とされた場所にまで営巣する状況が見られる。現在、石狩川下流域やサロベツ原野などで繁殖期に逗留するなど、新たな繁殖地を求め個体群は分散する傾向が見られる。しかし、越冬期は殆どの個体が阿寒町・鶴居村・音別町など釧路湿原周辺の給餌場に集中している。絶滅に瀕した際にボトルネックによって個体群の遺伝的な多様性は失われたと考えられ、感染症などが発生した際再び絶滅に陥る危険性が指摘されている。給餌場や繁殖地と人間の生活環境が近いため電線事故や交通事故が増加し、人馴れによる危険意識の低下や重金属等の汚染などが内因として考えられる。以上、タンチョウを取り巻く様々な要素で話題提供を頂き、今後の保全管理の方向性や問題点を考えて行きたい。
- 松本文雄 (阿寒町・阿寒国際ツルセンター)
- 給餌を関わる問題
- 渡辺ユキ (同上)
- タンチョウを取り巻く病気
- 井上雅子 (釧路市動物園)
- タンチョウの事故
- 長谷川理 (北海道大学・院・地球環境)
- 遺伝的多様性
- 大石麻美 (新潟大学・院・自然科学)
- 繁殖と夏場の餌環境
- 斎藤和範 (道立旭川高看)
- 冬場の餌環境
- 古賀公也 (阿寒町まちづくり推進課)
- 総合討論
G13: 植物の生理生態:生理生態学に有効な非破壊的測定の技術
植物の生理生態的な特性を見いだすための測定や観察には,植物の活動がそのままの状態で反映されていることが望ましい。しかし,これを言葉どおり実現することは難しく,植物体の一部を切り取ったり,自然条件とは必ずしも一致しない実験条件の下でデータを集めざるを得ないことは多い。植物の機能は撹乱や環境条件に応じてダイナミックに変化するため,破壊的または制御条件の下にある測定から得られる情報には,野外の植物に生じている現実的な側面が損なわれてしまっていることが懸念される。たとえば,樹木の木部を流れる水の動態や、物理的にアクセスしにくい土壌中の根,広範囲に無数にひろがる樹冠内の葉のなどは,破壊的な手法によってはその全体像を把握しにくい対象であった。 今回の自由集会では,こうした器官レベルでの測定に伴う困難さを克服するような手法によって研究を行っている3人の演者の方々に話題を提供していただく。そして,それらの技術の生理生態学をはじめとした多方面へのさらなる応用と発展性について議論したい。
- 内海 泰弘 (九州大学農学部宮崎演習林)
- 樹幹における木部水分分布の可視化
- 里村 多香美 (京都大学生態学研究センター)
- 土の中を見ることでわかること −野外での植物細根動態研究の最前線−
- 中路 達郎 (環境研地球環境研究センター)
- 森林リモートセンシングの最近 −分光反射情報を用いた光合成推定の試み−
この自由集会の web page http://ecology.ag.kagawa-u.ac.jp/nondestructive.html
G14: 環境省『外来種新法』とセイヨウオオマルハナバチ
環境省の外来種対策法成立に関わる環境省や生産現場に関わる農水省およびマルハナバチ販売会社、さらにその生態リスク研究を進める生態学会の関係者が一同に会し、マルハナバチ侵入種問題を通して、生物多様性保全と農業生産性という二つの大儀のコンフリクトを如何に解決していくかを議論する。
- 上杉哲郎(環境省自然環境局)
- 「外来種新法と環境省の外来種対策」
- 五箇公一(国立環境研究所)
- 「外来種新法と輸入昆虫問題」
- 米田昌浩(アピ株式会社・マルハナバチ普及会)
- 「外来種新法とセイヨウオオマルハナバチの農業利用ー現場でのとりくみと今後の課題ー」
- 横山潤(東北大学)
- 「外来種新法とセイヨウオオマルハナバチの野生化問題」
- 岡田正孝(農林水産省生産局野菜課)
- 「セイヨウオオマルハナバチ利用の実態」
G15: 生態系エンジニアとしての大型動物-環境改変を介した相互作用とその影響-
本集会では、大型で移動能力が高い哺乳類や鳥類を取り上げ、生態系エンジニアとしての特徴や影響について整理し、議論したい。環境を広範囲にわたって大きく改変する大型動物は、群集構造や生態系に多大な影響を与え、時には系全体を丸ごと変えてしまうこともある。これら大型動物の行動が、異なる場においてどのように環境を改変し、その結果として、生物間相互作用や群集構造、食物網などがどのように変化するのかを、各生息場所の特性から紹介したい。講演は、場所 (藻場、磯、草地、森林) 、動物の行動 (採食または繁殖) 、改変の種類 (物理的または化学的改変) 、時空間スケール、などをキーワードとして行う予定である。
- 1. 仲岡雅裕 (千葉大・自然科学)・堀正和 (東大・農)・向井宏 (北大・厚岸臨海)
- 海草藻場における大型草食動物による環境改変効果と生物群集への影響
- 2. 堀 正和 (東大・農)
- 磯浜生物群集における移動性動物を介した環境改変効果とその影響
- 3. 亀田佳代子 (琵琶湖博)・保原達 (環境研)・三阪里美 (東京都東村山市)
- カワウの繁殖による森林の物理的改変と化学的改変
- 4. 上野裕介 (北大・水産)・堀正和 (東大・農)・野田隆史 (北大・水産)
- アオサギの繁殖活動が林床の物理環境と生物群集に及ぼす影響
- 5. 井村 治・時 坤・佐々木寛幸 (畜草研)
- 牛のgrazingは植生の改変を介して草地の節足動物群集に影響を与える
- 6. 宮下 直 (東大・農・生物多様性)
- コメント
G16: デ−タ解析で出会う統計的問題−多重検定と多重比較をめぐって
生態的なデ−タの解析では、多くの処理や条件の間で比較するときや多くの変数や
要因の間の関係を分析するときなど、検定は1回ではなく多くの検定が行われること
がよくある。一緒に行われる検定が多くなれば、
『どこかで少なくとも1回誤って帰無仮説を捨てて有意であるとする確率』
は当然高くなる。
この検定の数の効果を補正するのが多重検定や多重比較の問題であり、
さまざまな方法が使われてきた。だが、
多重検定や多重比較の効果の補正は、不適切な手法を選びやすく、目的に合わない使
い方の巣窟であると言えるだろう。
まず粕谷の話題提供では、
一筋縄ではいかない多重検定や多重比較を、
統計的方法の原点から考えて、対応する力を高める機会とするのが目的である。
次に久保が統計ソフトウェア R
を使った多重比較の簡単な例を示す。
同時にやや異なった観点から
「統計学的な多重比較するときに常に多重検定は必要か、
モデル選択でもっと簡単にならないか」
という問題も検討する。
この自由集会では多重比較などに必ずしもくわしくない人の来聴を想定して、 初歩的な内容から問題に取り組む予定である。 さまざまな分野の人に集まっていただいて、 多重比較・多重検定の問題について意見を交換したい。
- 粕谷英一 (九州大)
- 多重比較と多重検定の方法選び − どんなときに、何を
- 久保拓弥 (北海道大)
- 統計ソフトウェア
R
でやってみる多重比較
- この自由集会の web page
- http://hosho.ees.hokudai.ac.jp/~kubo/ce/2004/
G17: 生態学者よ、街に出よ!
現代社会に対して最も大きな影響力を持つ存在である企業が、いま急速に「環境」への対応を変えつつある。90年代以降、先進的な企業は主に企業内部と製品の環境負荷削減に努力してきた。最近では世界的に企業の社会的責任(CSR)が問われていることもあり、例えば生物多様性の保全にまで関与する企業も出てきた。しかしながらこのような動きは、研究者には十分に伝わってはいないし、逆に企業も研究者の研究内容・目的ををほとんど知らない。
生物多様性の保全などをめざした企業の環境活動には、生態学的知見や研究者との協働が今や必須と言える。しかし、現状のように相互理解の足りないままでは、企業の環境活動が誤った方向に進むことさえ、ありえないことではない。これが、我々が生態学者に「街に出よ!」と呼びかける理由である。
本集会では、まず企業の担当者から企業の環境対応の現状を紹介していただき、その全体的な動向を把握した上で、今どのような問題で困っているのか、どのような協働を求めているのか、具体的な問題提起をしていただく。また研究者からも、取組例を紹介してもらう。これらを通じて、研究者と企業の協働により、どのようなことが実現できるものなのか、今後どのように進めるべきなのかを議論してゆく。
- 足立直樹(株式会社CSR経営研究所)
- 今、なぜ企業と学術研究者の協働が必要なのか?
- 石川真一(群馬大学社会情報学部)
- 企業と大学人の協働の一例:サラ地からの大型ビオトープ育成管理
- 荒井喜章(松下電器産業株式会社・環境本部・環境企画グループ)
- 企業の環境活動の現場から学術研究に望むこと
G18: 第9回植生地理学の視点:上部温帯林再考
本州の温帯上部に認められるウラジロモミ、ミズナラなどの自然林は、北海道や東北アジアに広がる汎針広混交林との関連性が指摘されている。今回は上部温帯林の位置づけについて、森林型や気候との関連から議論したい。
- 野嵜玲児(神戸女学院大・人間科学)
- 上部温帯林概説 −森林型と植生帯での位置づけ−
「上部温帯林」とは演者が1990年に中間温帯林(下部温帯林)に対峙させて提示した概念であり,本州の冷温帯上部に成立するブナを欠くウラジロモミ林やコメツガ林,ミズナラ林などを含む.相観的・フロラ的・温度的にも北海道の針広混交林(北部温帯)との類縁が認められるが,本州に固有な要素も多い.こうした固有性を重視すると,上部温帯林は中間温帯林およびブナ林とともに,水平的には南部温帯に所属し,その上部亜帯に位置づけられる.
- 高柳絵美子(筑波大・生命環境)・上條隆志(筑波大・農林)・松井哲哉・小川みふゆ(森林総研)
- 本州に針広混交林はあるのか? −気候値からの再検討−
汎針広混交林は北海道の冷温帯から亜寒帯への移行域として古くから認識されてきた。一方、本州の冷温帯上部にも相観や種組成の類似する林(例:ウラジロモミ林)が存在するが、両者の関係は十分検討されていない。本研究では、(1) 本州に北海道の針広混交林成立域に相当する気候域が存在するかどうか? (2) もしあるとすれば、ウラジロモミを代表とする冷温帯上部の林が該当するのか? について、自然環境GISの植生データと3次メッシュ気候値を用いて検討した。
G19: 陸水低湿地における生物多様性保全研究の現状と方向性
「豊葦原瑞穂国」「豊葦原中国」は古事記に記された日本の呼び名です。水辺に葦(ヨシ)が豊かに生い茂り、稲穂たなびく国、それが日本だと古代の人は語っています。わが国の原風景ともいえるヨシ帯を中心とした陸水低湿地の保全のあり方について、水生植物、無脊椎動物、魚類、鳥類等様々な生物群の種多様性や遺伝的多様性、生物の生活や移動様式の視点から検討し、湿地復元の手法や可能性について議論します。
- 演題 1. 立地条件が規定するヨシ群落の遺伝構造―群落の遺伝的多様性維持に関わる小規模水系の機能
- 井鷺裕司・近藤俊明(広島大学総合科学部)・志賀隆(神戸大学自然科学研究科)・金子有子(滋賀県琵琶湖研究所)
- 演題 2. 琵琶湖岸の残存低湿地の現状と農地からの復元の可能性
- 浜端悦治(滋賀県琵琶湖研究所)・西川博章・折目真理子((株)ラーゴ)
- 演題 3. 水田が魚類群集に果たす生態学的役割
- 細谷和海(近畿大学農学部)
- 演題 4. コウノトリの生息環境としての河川浅場の特性と再生
- 内藤和明1・大迫義人1・池田 啓1・三橋弘宗2・田中哲夫1(1兵庫県立大・自然研,2人と自然の博物館)
- 演題 5. 琵琶湖周辺干拓地の湛水化に伴う生物群集の変化と湿地復元の可能性
- 西野麻知子(滋賀県琵琶湖研究所)、滋賀県湖北地域振興局田園整備課
G20: 自然再生事業で生態系保全をどう図るか? −GISによる環境把握の重要性と活用手法−
釧路湿原をはじめとする自然再生事業では、様々な参画者の合意形成を得ながら生態 系の保全や復元を図ることが必要となります。そのためには、地形や植生などの自然 環境に関するデータをはじめ、法規制や土地利用などの社会環境などの様々なデータ を地図情報としてまず整備し、その上で地域の動植物の分布や生態系、保全すべき地 域等についてGISを用いてわかりやすく解析評価することが有効です。
本集会では、自然再生事業においてGISを活用して地域の自然環境や生態系をど う保全管理すべきか、以下の観点から釧路湿原やその他の具体事例をもとに話題提供 や議論を行いたいと思います。
- 環境ベースマップ整備の重要性
- 基盤環境の把握や地生態学的な観点の重要性
- 生態系の広域的な把握の必要性
- 生態学からみた保全計画等の事業の優先順位の考え方
- 生態学が寄与すべき情報の共有化
- 多様な主体の参画と合意形成について
- 中村太士(北海道大学農学部)
- 小泉武栄(東京学芸大学教育学部/NPO地域自然情報ネットワーク)
- 増澤 直(朝日航洋株式会社/NPO地域自然情報ネットワーク)
- 中越信和(広島大学総合科学部)
- 三橋弘宗(兵庫県立人と自然の博物館/NPO地域自然情報ネットワーク)
- 渡辺 修(株式会社さっぽろ自然調査館)
- 金子正美(酪農学園大学/NPOEnvision環境保全事務所)
- 逸見一郎(株式会社地域環境計画/NPO地域自然情報ネットワーク)
なお、本集会(生態学会)の終了後、NPO法人地域自然情報ネットワーク主催によ る研究者、実務者向けのGIS講習会を開催します。詳しい内容についてはNPOホームページ http://www.boreas.dti.ne.jp/~kent/gcn/ (6月より受付)をご覧下さい。
G21: 屋久島の自然植生保全とニホンジカ管理
高密度化したニホンジカが自然植生へ及ぼす(悪)影響が各地で危惧され,これ まで農林業被害対策が主であったシカ個体群管理に対して,自然植生の保全・復元 という新たな課題が突きつけられています.これはシカ密度が安定的とされてきた 西南日本でも例外でなく,世界遺産・原生自然環境保全地域・国立公園とあらゆる 保護の網がかけられている屋久島においても,多くの固有種や希少種を擁する草本 層の変容とヤクシカの密度増加が指摘されています.
しかし実際には,農林業被害や自然植生へのインパクトの実態,植生とヤクシカ の動態や因果関係など,議論の土台となるべき情報が整理されておらず,また,屋 久島における「生態系保全」をどのような目的のもとで行うのか,地域社会におけ る合意形成をどのように進めるかなど,根本的議論もほとんど行われていません.
そこで本集会では,1)まず屋久島における草本相の変容とヤクシカ個体群の動態 に関する情報を検討し,2)因果関係をどう評価するか,3)どのようなシカ管理手 法があるか,4)そもそもどのような「生態系保全」(目的や体制のオプション)が あるか,という基本的問題点を整理した上で,今後の具体的施策へ向けて,どのよ うなデータ・議論・体制が必要か議論したいと思います.
なお,公募シンポジウムS3と本集会は,基本的に同じ問題設定の元,同一会場で 開催されます.屋久島フリークはじめ多様な方々の議論参加を期待します.
- 1. 矢原徹一(九大理学研究院)
- 「屋久島・南九州の固有植物の分布と減少傾向」
- 2. 立澤史郎(北大地域システム科学講座)
- 「南の島のシカ個体群:大隅諸島における生息状況と管理状況」
- 3. 揚妻直樹(北大北方生物圏フィールド科学センター)
- 「自然生態系の構成員として見た植生と草食動物」
- 4. コメント:
- 湯本貴和(総合地球環境研),常田邦彦(自然研),手塚賢至(屋久島在住;交渉中)
- 5. 総合討論
- 質疑含めて各30分×3 + コメント・総合討論50分
G22: アグロエコロジー研究会 VII:農村生態系の再生:「風土の記憶」をどう読み込むか?
故郷(農村)の景観や生態系は、一言で言えば「風土」という言葉に凝縮されるだろう。
「風土」は、自然立地環境のみならず、人との働きかけとによって創り出されてきた歴史時間も地域的個性として語ることができる。しかし、今や我が国の農村では、ライフスタイルや生産体系を全国画一の水準で統一できるほどの技術イノベーションの結果、先人達の営みの中で培われてきた「風土」感覚が薄れつつあるのではなかろうか。したがって、「風土」の根幹を成し、人間と大地との相互作用系であり、かけがえのない(不可逆的な)農村生態系も現在、急速に失われている現状となっている。今後、自然再生推進法などで農村生態系の再生が指向される中、土地に刻まれた人と自然が織りなす「風土」を呼び覚ますことを意図した取り組みがますます重要になってくると思われる。そこで今回のアグロエコロジー研究会では、日頃、農村の「風土」を意識して農村生態系の研究と保全活動に現場レベルで携わる研究者に、生態学というツールを用いて農村の「風土」をどのように表現しうるのか、そして農村生態系の再生に向けてどのようにアプローチしていったらよいのかを、実際の取り組み事例の紹介を中心に話題提供してもらい、農村の「風土」を読みとっていく手法を考えてみたい。
- 嶺田拓也(農業工学研究所)
- 「趣旨説明:農村の風土 −人間が大地に刻み込んだ歴史」
- 鎌田磨人(徳島大・工)
- 「景観生態学の手法で「風土」を読む」
- 下田路子(東和科学)
- 「古文書から何を読み出せるか?」
- 日鷹一雅(愛媛大・農・農場)
- 「フィールドワークからの風土の読みとり」
- 討論司会および総括
- 日鷹一雅(愛媛大・農・農場)
- 「村の風土もレッドリスト:消えつつある本来の農村生態系をどう呼び覚ますか」
G23: フェノロジー研究会「分布限界形成にかかわるフェノロジー」
会場: 大和旅館(釧路市黒金町9-1 Tel. 0154-22-6511)
釧路駅より南へ徒歩約5分(市役所斜向;生態学会会場北約300m) 時間順リスト | 集会一覧 | 会場について
種や優占群落の分布限界は、従来、気候などの環境要因(例:WI、最低極温など)との地理的対応に基づいて論じられることが多かった。しかし、なぜその環境変数が分布限界をもたらすのかは、植物側の諸性質を観察し、その生活や更新の成立・破綻から因果的に説明されねばならない。フェノロジー、とりわけ開芽の早さには、他種に先駆けた葉群展開のメリットと晩霜害のリスクという正負両面があり、分布の規定にかかわる性質として重要である。今回は、開芽フェノロジーが分布限界の形成にどのようにかかわるのかを、ブナ(渡島半島や本州内陸での分布限界)などを題材に議論してみたい。
- 演題:
- 「フェノロジーからみた植生分布」林 一六(筑波大名誉教授)
- 「ブナの開葉フェノロジーと晩霜害」丸田恵美子(東邦大・理)
会場での宿泊もできます(二食付き約6000円、但し先着20名まで)。宿泊を御希望の方は下記へ Fax、E-mailのいずれかにてお申し込みください。研究会会員外の参加も歓迎します。申込期限は7月末日としますが、その後でも受け付ける場合もあるのでお問い合わせください。なお、今回は翌日のエクスカーションは行いません。
申込・連絡先: 大野啓一(〒260-8682 千葉県立中央博物館;Fax. 043-266-2481; e-mail: oonok@chiba-muse.or.jp)
会場について
- A 会場: ホール,700 人
- B 会場: ホール,360 人
- C 会場: ホール,252 枚 (ポスター会場)
- D 会場: 研修室,120 人
- E 会場: 視聴覚室,90 人
- F 会場: 会議室,20 人 (大会本部)
- G 会場: 和室,5 人 (託児所)
- H 会場: 応接室,10 人 (学会本部)
- I 会場: 食堂,約 50 人
- U-Z 会場: 釧路プリンスホテル (別の建物)