| 要旨トップ | ESJ66 シンポジウム 一覧 | | 日本生態学会第66回全国大会 (2019年3月、神戸) 講演要旨 ESJ66 Abstract |
シンポジウム S17 3月19日 9:30-12:30 Room G
湿地の劣化と喪失は21世紀に入ってもなお進行しており、生物多様性の減少や生態系サービスの劣化を通じて大きな社会的損失を招いている。一方で一部の地域では湿地を対象とした自然再生の取り組みが進展をみせている。このような自然再生をさらに効果的にし、より広い地域への展開を可能にするためには、広域的な湿地の分布や生物多様性情報にもとづいた効率的・効果的な計画の立案がかかせない。また、そのような計画立案を支える情報の収集・統合には、市民調査との連携や最新の観測手法の活用を含む、モニタリングの高度化が不可欠である。本シンポジウムの前半では、日本の湿地を網羅するデータベース構築と、湿地の生物に関する科学的情報を効果的・効率的に観測・収集し活用する方法について話題提供を行う。
実際に湿地の保全・再生を進める上では、利害関係が異なる多様な主体の合意形成が欠かせない。合意形成の場においては、保全・再生の対象とする湿地の価値を多面的・定量的に評価し、わかりやすく提示することが、当事者間の認識の共通化や問題点・妥協点などの具体化を促す上で有効である。また複数の生態系サービスを同時に高めるような方策が提案できれば、様々なステークホルダーの支持が得やすくなるだろう。シンポジウムの後半では、湿地再生の生態系サービスの評価や、多数のサービス間に生じるトレードオフやシナジーの関係を分析した研究について紹介する。さらに、気候変動・人口減少を踏まえ、治水・水質浄化・生物多様性保全・農地保全などに寄与するグリーンインフラとして湿地を活用する方向性を示し、その実現に向けた道筋を議論する。
[S17-1]
全国湿地データベースの必要性とその利活用
Necessity and utilization of national wetland database
[S17-2]
みんなで水草相を調べよう:調査手法の一般化・効率化に向けた実践的評価
How to make the aquatic macrophyte flora list: Generalization and efficiency improvement of survey method
[S17-3]
和名異名の整理からはじめる日本産水生・湿生植物チェックリストの構築
Constructing a wetland plants checklist in Japan
[S17-4]
カエルの鳴き声を用いた湿地の生息地評価:関東平野の田んぼのカエルマップ
The wetland evaluation using anuran calling surveys: the habitat distributions of paddy field-breeding frogs of the Kanto plain
[S17-5]
湿地調査における環境DNAの活用と課題
Application and challenges of environmental DNA for surveys in wetland
[S17-6]
流域生態系サービスのトレードオフとその緩和
Alleviating the trade-off among ecosystem services at watershed scale
[S17-7]
グリーンインフラとしての谷津奥部の湧水湿地
Ecosystem function of spring-fed wetland in Yatsu, small valley