| 要旨トップ | ESJ67 シンポジウム 一覧 | 日本生態学会第67回全国大会 (2020年3月、名古屋) 講演要旨
ESJ67 Abstract

シンポジウム MES02  3月5日 17:00-20:00 Room E

エピ遺伝学（エピジェネティクス）とその生態学的意義－可塑性・継承・進化―
Epigenetics and its ecological implications-plasticity, transgenerational inheritance and evolution-

伊藤佑（京都大学/John Innes Centre）, 荒木希和子（立命館大学）
Tasuku ITO（Kyoto University / John Innes Centre）, Kiwako S. ARAKI（Ritsumeikan University）

生物は同種の個体間にも多様性を維持し、個体においても環境に対する応答や成長に伴い変化しうる可塑性を保有している。これまで遺伝マーカーなどを用いた生態遺伝学的な手法により遺伝的多様性や遺伝的分化についての研究が進展している。しかし、野外の生物には塩基配列の変化である遺伝的変異では説明できない多様性や表現型の変化がまだ数多く存在している。このような変化に対して、遺伝子発現やエピジェネティックな修飾の解析から、非モデル生物における表現型に対しても分子メカニズムが明らかにされつつある。これらがどの程度安定的に維持され、次世代へ継承されうるかは重要な点であるが、未だ検証に乏しい。
DNAやヒストンの化学修飾をはじめとした塩基配列の変化を伴わないエピジェネティックな修飾は、幅広い生命現象に関連している。その動態や制御機構に関してはこれまで多くの研究がなされているが、エピジェネティックな修飾には、長期間にわたり維持され、繁殖を介して次世代へ継承されるものも存在する。このようなエピジェネティックな修飾の変化はときに表現型にも影響を及ぼすが、適応・進化的な時間スケールにおいて、どのような生態的意義を持つのかについては大いに議論の余地がある。
本企画では、長期間保持され次世代へ継代するエピジェネティックな機構と、多様な表現型や環境への応答について、それぞれの最近の知見を紹介する。そして双方の関係を通して、エピジェネティックな機構の持ちうる意義や進化への結びつきについて議論する。

[MES02-1]
DNAメチル化の継世代的動態とフィードバック *伊藤佑（京都大学, John Innes Centre）
Transgenerational dynamics and feedbacks of DNA methylation in Arabidopsis *Tasuku ITO（Kyoto University, John Innes Centre）

[MES02-2]
多様な表現型を引き起こすエピ変異 *西村泰介（長岡技術科学大学）
Epi-alleles causing a variety of phenotypes *Taisuke NISHIMURA（Nagaoka Univ. of Technology）

[MES02-3]
植物の遺伝子ボディ領域におけるDNAメチル化の進化パターン *宅野将平（総合研究大学院大学）
Evolutionary patterns of DNA methylation in plant gene bodies *Shohei TAKUNO（SOKENDAI）

[MES02-4]
アブラナ科野生植物のエピジェネティック変異と表現型可塑性 *荒木希和子（立命館大学）
Epigenetic modification and phenotypic plasticity of wild plant species in Brassicaceae *Kiwako S. ARAKI（Ritsumeikan University）

[MES02-5]
甲虫の武器サイズにおける発生可塑性とエピジェネティック機構 *岡田泰和（首都大学東京）
Developmental plasticity and epigenetic regulation of a beetle weapon *Yasukazu OKADA（Tokyo Metropolitan University）

[MES02-6]
水草からせまる葉の表現型可塑性の仕組みと進化 *古賀皓之, 塚谷裕一（東京大学）
Mechanisms and evolution of phenotypic plasticity in leaf forms in aquatic plants *Hiroyuki KOGA, Hirokazu TSUKAYA（The University of Tokyo）

日本生態学会