| 要旨トップ | ESJ71 自由集会 一覧 | 日本生態学会第71回全国大会 (2024年3月、横浜) 講演要旨
ESJ71 Abstract


自由集会 W01  3月17日 15:30-17:00 Room A

農地景観の撹乱と生物多様性保全~水田・茶畑・水路・畦畔~
Disturbance and biodiversity conservation in agricultural landscapes - rice paddies, tea fields, irrigation ditches and field margins

出戸秀典(東京大学), 小柳知代(東京学芸大学)
Hidenori DETO(Tokyo Univ.), Tomoyo F KOYANAGI(Tokyo Gakugei Univ.)

 農地景観は撹乱が卓越する代表的な場であり、その構成要素である水田や畑、畦畔や水路などは農業活動に伴う様々な人為攪乱によって維持されている。そこには撹乱に依存した生物種が多く生息し、特有の生態系が成立している。しかし、近年の農業の集約化や耕作放棄といった攪乱レジームの改変に伴って、生物多様性が減少し、農地景観に生息する種の多くが絶滅の危機に瀕する事態となっている。近代的な農業活動に伴う生物多様性の減少とそれによる損失は世界的にも問題となっており、農地景観でいかに生物多様性を保全していくかは大きな課題である。一方で、農地景観は言うまでもなく営農の場であり、生産活動と生物多様性保全を両立していくことが求められている。
 撹乱と一口に言っても、それにはタイプや頻度、強度、タイミングなどの違いがある。それらが生物に与える影響は、種の生理・生態的な特性によって大きく異なるに違いない。更に、種間相互作用を通して、成立する群集の種組成や動態にも影響が波及することが予想される。農地景観は様々なタイプの撹乱(耕うん、収穫、灌漑、草刈りなど)が多様な場(水田、畑、水路、畦畔など)と多様なレジーム(頻度や強度、タイミングなど)で生じるという点で、撹乱が生物多様性の維持や崩壊に果たす役割を理解するうえでの格好のシステムでもある。
 本集会では、日本の農地景観を舞台に、その構成要素である畑で発生する希少な蝶、畦畔に生息する希少な蝶、小河川と水田を行き来する水生動物群集、水路に生育する植物群集を対象として、撹乱に焦点を当てた研究事例を紹介する。その中で、生物多様性保全における撹乱の役割や、生産と保全を両立する撹乱の実現可能性について議論する。

[W01-1]
食草の栽培地における人為攪乱とツマグロキチョウの個体数推定 *岡田遼太郎, 鈴木紀之(高知大学)
Effects of human disturbance of the cultivated hostplant on the population abundance of the endangered yellow butterfly Eurema laeta *Ryotaro OKADA, Noriyuki SUZUKI(Kochi Univ.)

[W01-2]
長期の草刈り実験から解き明かすミヤマシジミ個体群の応答とそのメカニズム *葉雁華, 出戸秀典, 宮下直(東京大学)
Responses of Plebejus argyrognomon subpopulations and their mechanisms clarified through long-term mowing experiments *Yenhua YEH, Hidenori DETO, Tadashi MIYASHITA(Tokyo Univ.)

[W01-3]
氾濫原と水田による補完的な水生動物群集の多様性の保全 *田和康太(国立環境研究所)
Floodplains and rice paddy fields conserve the biodiversity of complementary aquatic animal assemblages *Kota TAWA(Nat. Inst. Env. Stu.)

[W01-4]
山間地における水田脇の承水路内の植物群集の特性:圃場整備履歴と農法の違いへの着目 *斎藤達也(熊本県立大学), 小柳知代(東京学芸大学)
Plant community characteristics in ditches beside paddy fields: Focusing on agricultural land consolidation and farming methods *Tatsuya I SAITO(Pref. Univ. Kumamoto), Tomoyo F KOYANAGI(Tokyo Gakugei Univ.)


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