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第19回 生態学琵琶湖賞の実施について

占部城太郎(琵琶湖賞運営委員長)

 生態学琵琶湖賞は、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞で、日本生態学会が滋賀県と共同で運営し表彰しています。

 世界有数の古代湖であり日本最大の湖でもある琵琶湖の名称を冠する生態学琵琶湖賞は、国際的にも知名度が高く、1991年に滋賀県により創設されました。今年で25年、19回目の表彰を迎えます。この間、14回までは滋賀県により運営されてきましたが、15回からは生態学会が引き継いで運営と選考を行っています。財政的理由により賞金はありません。前運営委員長の菊沢喜八郎先生は、「賞金ゼロでは応募者の数も先細りになるのではないかと心配している」と述べられておられました。しかし、生態学会が引き継いで以後の過去4回の応募者や受賞者の輝かしい業績をみると、それが杞憂であることがわかりました。実際、受賞者はいずれもさらなる業績をあげ、各分野で指導的な研究者として活躍しています。その活躍が、賞金とは無関係に、アカデミアにおける生態学琵琶湖賞の重さと意義を高めていると言えるでしょう。

 生態学琵琶湖賞は、日本だけでなくアジア・オセアニア地域の研究者を対象に毎回1〜2名を表彰しており、第18回は国立台湾大學海洋研究所のChih-hao Hsiehさんが受賞されました。Chih-hao Hsiehさんは、理論とデータ解析を統一した新しい時系列解析の手法を考案し駆使することで、魚類やプランクトン群集の環境影響応答を解明するなど、独創的で質の高い研究を行ってきました。また、台湾と日本の研究者や学生を結びつけるなど、積極的な学術交流の姿勢も高く評価されました。

 今回、第19回でも、いつものとおり、広く水にかかわる環境問題に取り組んでおられる50歳までの気鋭の研究者を対象として琵琶湖賞の応募者を募集します。ご自身の業績に自信をもって、躊躇なく、生態学琵琶湖賞に応募していただきたいと願っています。審査は環境科学や野外科学の広範囲な分野で活躍されてきた選考委員により行われるため、特定の分野に評価が偏ることはありません。日本生態学会が主体となって募集選考する賞ですが、学会員でなくても、応募、受賞可能です。受賞者には、来年7月上旬に滋賀県において、滋賀県民を中心とする一般の方々や、県の関連職員に向けた受賞記念講演を行っていただきます。さらに義務ではありませんが、日本生態学会の刊行物に記念論文を執筆していただくことも望まれています。本賞は広く水環境にかかわる分野での指導的役割を顕彰するものですが、一般の方々にも学術的成果を分り易く紹介する役割を果たしています。一般への学術成果の紹介は、科学の裾野を広げることになり、そのエコーは研究者の最高の喜びになるでしょう。

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