受賞講演要旨
陀安 一郎 氏(総合地球環境学研究所 研究基盤国際センター・教授)
「元素の同位体から見た生態系のつながり」
私たちが暮らしている生態系の中には、いろいろなつながりがあります。直接的な、食う−食われる関係はもちろんですが、異なる生態系間にもつながりがあります。森林と河川は相互に関係しますし、海までつながる関係もあります。また、生態系は今だけではなく、過去の資源を利用して現在があります。私たち人間も、そういった生態系に支えられて生きています。私は、そういった生態系の関係性を研究するために、元素の同位体比分析という手法を活用してきました。このような見方を紹介しながら、自然と人間の関係についてお話ししたいと思います。
安原 盛明 氏(The University of Hong Kong・Associate professor)
「アジアにおける海洋生態系変動史」
過去においてどんな場所にどんな生物が何種類分布していたかというような情報は基本的に化石によってのみ直接知ることができます。そこで、我々古生物学者は化石として非常によく保存される特定の分類群を過去を見るための”窓”として利用し、過去の生態系を復元してきました。本講演では貝形虫の化石を用いた演者の研究を紹介し、アジア海域の過去の生態系は人間活動・自然環境変動によって大きく影響を受けてきたことを示します。過去を”窓”を通してしっかり観察することは、来る未来に備えるために不可欠です。