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第23回 生態学琵琶湖賞の実施について

中野伸一(琵琶湖賞運営委員長)

 生態学琵琶湖賞は、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞で、今回が第23回になります。生態学琵琶湖賞は1991年に創設され、これまで42名の国内外の研究者が受賞しています。日本生態学会が主体となって募集選考する賞ですが、学会員でなくても、応募・受賞可能です。

 前回第22回は、横浜国立大学大学院環境情報研究院の鏡味 麻衣子博士と、中国科学院水生生物研究所・淡水生態学研究センターの徐 军博士が受賞しました。鏡味博士は、植物プランクトンに寄生する菌類(ツボカビ)の物質循環における重要性を見出したプランクトンの生態学者で、ツボカビを介した植物プランクトンからミジンコへの物質経路「Mycoloop」の提唱者であり、寄生性ツボカビの食物網や物質循環における重要性を世界に先駆けて解明しました。また、鏡味博士は、病原菌の野外動態研究の重要性について日本学術会議を通じて行政や政策への反映を求めるとともに、日本語著書の上梓や、シンポジウム企画を通じた啓発活動も積極的に行ってきました。徐博士は、中国における魚類、軟体動物、水生植物の多様性パターンを中国全土レベルで研究し、流域レベルでこれらのパターンを規定する要因を解明しました。また、徐博士は、魚類の多面的な多様性パターンの世界的な変化を評価し、その変化に対する人間活動の影響を定量化しました。その結果、世界の半分以上の河川で人間活動が魚類相に深刻な影響を与えていることが明らかとなりました。徐博士の研究は、水生生物の保全と生態系管理にとって重要な科学的貢献を果たしており、高く評価されています。

 このように、これまでの受賞者は、水圏を対象にした国際的に高い水準の研究はもちろん、その成果をつうじて生態学のみならず学術や社会一般にも広く波及効果を及ぼしています。これらのことが示すように、生態学琵琶湖賞は水環境に関わる科学のすそ野を広げ、今後も広く社会に貢献すると期待される優れた研究者を後押しする学術賞です。

 審査は水圏科学の専門家だけでなく生物学や環境科学の分野で活躍されてきた選考委員により行われるため、特定の分野に評価が偏ることはありません。受賞者には、2025年7月の琵琶湖の日の前後に開催される授賞式で滋賀県知事より表彰されるとともに、受賞記念講演を行っていただきます。さらに、日本生態学会が刊行する学術雑誌に総説もしくは報文を執筆していただくこともお願いしています。

 皆様方におかれましては、ご自身の業績に自信をもっていただき、奮って、生態学琵琶湖賞に応募していただきたく思います。

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