| 要旨トップ | ESJ69 自由集会 一覧 | 日本生態学会第69回全国大会 (2022年3月、福岡) 講演要旨
ESJ69 Abstract


自由集会 W02  3月17日 16:30-18:00 Room B, 現地開催/ライブ配信あり

ゲノミクスで希少種を「発見」・「保全」・「評価」する
Genomics to "discover", "conserve", and "evaluate" rare species

井鷺裕司(京都大学)
Yuji ISAGI(Kyoto Univ.)

■生物多様性の多面的な価値は広く認められるようになってきたが、その状況は年とともに厳しくなっている。例えば、希少種の保全に関して、日本では1973年のワシントン条約、1992年の生物多様性条約などの国際条約を受けた国内法として、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律」いわゆる「種の保存法」が1992年に制定され、生物多様性保全活動が続けられてきた。「種の保存法」は2013年に意欲的な改正がなされ、「生物多様性の確保」を目的とすることや、「科学的知見の充実を図る」ことが国の責務とされ、最大級の保全努力が払われることが求められている国内希少野生動植物種を2030年までに700もの種を国内希少野生動植物種に指定する事が目標とされている。
■この様な多数の希少生物を、限りある労力、経費、時間などの保全リソースを活用して、適切かつ効率的に保全するためには、まずは認識されていなかった分類群の「発見」が必要である。国内希少野生動植物種のうち、繁殖の促進や生息地等の整備が必要である場合は、保護増殖事業が実施されているが、その効果は必ずしも良好ではない。希少種の保全難易度をゲノム情報によって予め予測できれば、より効果的な「保全」が期待できる。また、発見された分類群については、特に国内外に同一種が分布する希少種については、系統的な独自性に基づく保全価値の「評価」を行うことが、保全リソースの有効な活用につながるだろう。
■生物多様性の保全のためには社会・経済的な観点も含む幅広い施策が必要であるが、希少種の保全には遺伝的な情報が重要であり、そして、生物多様性の基盤をなす遺伝的情報の解読技術は飛躍的な発展を続けている。本自由集会では、希少種の保全を通した生物多様性保全について、「発見」、「保全」、「評価」、の観点からゲノム情報を活用して行ってきた研究を具体例とともに紹介する。

[W02-1]
ゲノム情報を活用した隠蔽希少植物の発見とその環境適応性の保全 *阪口翔太(京都大学)
Genomic analysis for recognizing the cryptic and endangered plants and conserving their environmental adaptability *Shota SAKAGUCHI(Kyoto Univ.)

[W02-2]
発見の困難な希少種を環境DNAから探るー地下水生種と渓流植物の事例ー *中濱直之(兵庫県立大学)
Exploration of rare species using environmental DNA; case studies of subterranean aquatic animal and Rheophyte *Naoyuki NAKAHAMA(Univ. of Hyogo)

[W02-3]
MIG-seq法を用いたゲノムワイドSNPデータによる保全ゲノミクス研究 *陶山佳久(東北大学)
Conservation genomics using genome-wide SNP data by MIG-seq *Yoshihisa SUYAMA(Tohoku Univ.)

[W02-4]
希少植物の絶滅危険度はゲノムの情報から読み取ることができる *牧野能士(東北大学)
Predictable extinction risk of endangered plants based on genomic information *Takashi MAKINO(Tohoku Univ.)

[W02-5]
国内外に生育する国内希少種の保全価値評価 *井鷺裕司(京都大学)
Conservation value assessment of rare domestic species growing in Japan and overseas *Yuji ISAGI(Kyoto Univ.)


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