第19回 生態学琵琶湖賞授賞式および受賞記念講演開催について
→チラシはこちら(PDF)
生態学琵琶湖賞は、水環境に関連する生態学およびその周辺分野における50歳未満の優れた研究者に贈られる賞です。滋賀県によって1991年に創設され、第15回より日本生態学会が実施主体となりました。厳正な選考の結果、森田健太郎氏 と Kenneth M. Y. Leung氏 が受賞されました。
以下の日程で、受賞式および受賞記念講演(無料)を行いますので、ご参加ください。
【日時】2017年8月27日(日) 14時~16時(13時半開場)
【場所】滋賀県立琵琶湖博物館 ホール
滋賀県草津市下物町1091番地 TEL077-568-4811
(交通アクセス:JR琵琶湖線「草津」駅下車。草津駅「西口」2番バス乗り場から、近江鉄道バス、「琵琶湖博物館」行き(約25分)、「琵琶湖博物館前」下車。徒歩2分。)
→行き方詳細
【授賞式】
挨拶 運営委員長
滋賀県知事
選考経過報告 選考委員長
表彰 滋賀県知事
来賓挨拶
【記念講演会】
受賞者 森田 健太郎 氏(国立研究開発法人水産研究・教育機構北海道区水産研究所・主任研究員)
Kenneth M. Y. Leung 氏 (The University of Hong Kong, Professor)
【祝賀会】琵琶湖博物館内レストラン「にほのうみ」にて開催(会費5,000円)
※受賞式および受賞記念講演参加希望の方は
日本生態学会 琵琶湖賞担当(biwakoprize@mail.esj.ne.jp) まで、お名前・所属・連絡先メールアドレスをお知らせください(当日参加も受付けます)。
また、祝賀会へ参加希望の方は8/21(月)までにお申し込み下さい。
受賞講演要旨
森田 健太郎 氏(国立研究開発法人水産研究・教育機構北海道区水産研究所・主任研究員)
「魚を食べながら守るために—自然の摂理を基盤として—」
日本では、昔から漁業が営まれ、魚介類は重要なタンパク源として利用されてきました。20世紀後半からは、全国的な漁獲量の低迷から、「獲る漁業」から「育てる漁業」への転換がうたわれ、種苗放流も盛んに行われています。しかし、その放流の効果が科学的に証明された例はあまり多くなく、逆に放流を通じて対象魚の適応度が低下するといった負の側面が知られるようになってきました。これからは、放流だけに頼るのではなく、魚が本来持つ自然の再生産力を最大限に活用することが大切です。人間による人工繁殖だけで世代交代を維持させるのではなく、人工繁殖で生まれた放流魚も親となれば自らの力で自然界で子孫を残すことができるように環境を整え、そして、自然産卵で生まれた野生魚も種親として種苗放流をおこなう——という放流魚と野生魚を融和させた資源管理の考え方について、放流が古くから行われているサケ・マスを例に紹介したいと思います。
Kenneth M. Y. Leung 氏(School of Biological Sciences, The University of Hong Kong, Professor)
「Scientific Derivation of Environmental Quality Benchmarks for Protecting Aquatic Ecosystems: Problems and Solutions(水圏生態系保護のための環境の質的基準を科学的に導く:その問題点と解決)」
Around the world, environmental quality benchmarks (EQBs) such as water and sediment quality guidelines are commonly established for regulating and managing chemical contaminants in aquatic environments. Fundamentally, if we know the effect threshold of a chemical in water or sediment (i.e., the EQB) and ensure its environmental concentration below this threshold, then the aquatic ecosystem and organisms living therein should be protected. The EQBs can also be adopted as targets for environmental quality management and as clean-up goals for environmental remediation. In this talk, I will examine the current practices in deriving the EQBs, highlight the problems, and explore their potential solutions. Particularly, I will underpin uncertainties associated with multiple stressors as the greatest challenge in the derivation and application of EQBs. Using examples, I will illustrate how multiple stressors like temperature, salinity and pH can influence the EQB, and demonstrate how we can employ empirical toxicity data and quantitative structure-activity relationship (QSAR) models to predict the EQBs at different environmental scenarios. I will introduce some novel ways of deriving EQBs for chemical mixtures including an integration of concurrently obtained environmental DNA (e-DNA) and chemical data. Finally, I will recommend the future direction and priorities in this important research area.
―― 以下和訳 ――
世界各地において、水や底泥の質に関するガイドラインとなっている環境の質的基準(EQB)は、一般的に水圏環境における化学汚染物質の規制と管理のために確立されている。基本的に、もし我々が水や底泥における化学物質の影響が出始める濃度(閾値)、すなわちEQBを知っておれば、そして環境中の濃度がその閾値よりも低いことが確認されれば、当該水圏生態系およびそこに生息する生物は守られる。EQBはまた、環境を質的に管理する際の目標と環境修復のためのゴールとしても使い得る。本講演では、私はEQBを得るために行われている現在の取り組みを検討し、問題点を明らかにすると共に、それらについての想定される解決策を探る。特に私は、未だ明らかになっていない点については様々なストレス要因が絡み合い、EQBの設定と適用に対して大きな課題となっていることを示す。私は具体例を示しながら、温度、塩分濃度、pHといった様々なストレス要因がどのようにEQBに影響を及ぼすのか示し、そして実験的に得られた毒性データと定量的構造活性相関(QSAR)を、さまざまな環境の将来に関するシナリオごとにEQBを予測する際にどのように活用するかを示す。私は、環境DNAや化学物質のデータを統合したものを含む化学的混合物に関するEQBを得るためのいくつかの新たな取り組みを紹介する。最後に、私は、私が取り組んでいるこの重要な研究分野の今後の方向性と優先的に取り組む課題について述べる。